Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
乳腺甲状腺 FNAしなくてよい甲状腺結節とは?(JABTSとの共同企画) 甲状腺偶発腫瘍の頻度と内容

(S458)

CT検査で偶然発見された甲状腺異常所見管理における超音波検査の役割

Management of Incidentally Discovered Thyroid nodule and Diffuse Goiter on Computed Tomography

伊澤 正一郎1, 松澤 和彦2, 大倉 裕子2, 足立 良行3, 石杉 卓也3, 高森 稔弘3, 福原 隆宏4, 松田 枝里子4, 北野 博也4, 山本 一博1

Shoichiro IZAWA1, Kazuhiko MATSUZAWA2, Hiroko OHKURA2, Yoshiyuki ADACHI3, Takuya ISHISUGI3, Toshihiro TAKAMORI3, Takahiro FUKUHARA4, Eriko MATSUDA4, Hiroya KITANO4, Kazuhiro YAMAMOTO1

1鳥取大学医学部病態情報内科学分野, 2鳥取大学医学部地域医療学講座, 3鳥取大学医学部附属病院検査部生理部門, 4鳥取大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

1Division of Cardiovascular Medicine, Endocrinology and Metabolism, Department of Molecular Medicine and Therapeutics, Tottori University Faculty of Medicine, 2Department of Regional Medicine, Tottori University Faculty of Medicine, 3Division of Clinical Laboratory, Tottori University Hospital, 4Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

【背景】
超音波検査(US)は高解像度,低侵襲かつ安価に評価が可能であることから,甲状腺結節性病変の診断における第一選択である.しかし画像検査の普及により他臓器疾患の評価を目的とした画像検査,とりわけCT検査で甲状腺低吸収域(LDA)あるいはびまん性甲状腺腫大(DG)が偶然指摘されることも少なくない.また,これらの背景疾患および評価方法に関するエビデンスは限定的である.
【方法】
2011年10月〜2014年9月に他臓器疾患評価を目的に実施したCTにてLDAあるいはDGを指摘され,当院内分泌代謝内科を初診した患者を対象に,受診背景,甲状腺機能検査(TFT),抗サイログロブリン抗体価(TgAb),抗TPO抗体価(TPOAb),血清サイログロブリン濃度(Tg),US所見を後方視的に解析した.過去に甲状腺疾患の治療歴,検査歴のあるものは除外した.
【結果】
対象症例は99例(男30例,女69例),平均年齢は66±13歳であった.検査目的の大部分は他臓器の悪性腫瘍に関する二次検診および診断確定後の病期判定で,紹介元は呼吸器内科28例,消化器内科17例,産婦人科12例の順であった.USにて充実成分を有する結節は72/99例(72.7%)で,平均径17±11 mm,平均個数1.9±1.0であった.嚢胞は41/99例(41.4%)に認め,平均径13±12 mm,平均個数2.2±1.9であった.USと穿刺吸引細胞診を共に実施し,甲状腺乳頭癌と診断した症例は7/75例(9.3%)で,原発巣の平均腫瘍径は14.8±7.7 mm(最大24.5 mm,最小4.3 mm)であった.
一方でTgAbは26/99例(26.3%),TPOAbは13/99例(13.1%)にて陽性であり,TFTおよびUS所見とあわせて慢性甲状腺炎と診断した症例は20/99例(20.2%),バセドウ病と診断した症例は1/99例(1.1%)であった.
充実性結節を認める症例では,認めない症例と比較して血清TSH(2.11±1.86μU/ml vs. 9.30±23.90μU/ml, p=0.006)およびUSによる非結節部血流亢進所見の頻度(2/72 vs. 6/27,p=0.028)が陰性例(自己免疫性甲状腺疾患,甲状腺嚢胞)と比較して有意に低かった.Tgは充実性結節を認める症例で高い傾向にあったが,統計学的な有意差は認めなかった(83.4±117.1 ng/ml vs. 45.5±53.4 ng/ml, p=0.065).
【考察】
LDAあるいはDGを偶然CTで指摘され,内科紹介に至る症例における甲状腺異常所見の多くは充実性結節であり,USおよび穿刺吸引細胞診による評価が診断に必要であった.結節性病変に占める甲状腺乳頭癌の割合は,過去に報告された触診によるスクリーニングよりは低い傾向にあるものの,超音波によるスクリーニングよりは高頻度の傾向であった.一方で充実性結節を認めない症例では,嚢胞のほかに慢性甲状腺炎などの自己免疫性甲状腺疾患を有する症例が少なからず存在することから,TFTや甲状腺自己抗体の評価を同時に行うことが必要と考えられる.
本検討では,内科紹介症例という対象症例の偏りを少なくするため,同様に甲状腺疾患の紹介を受けている当院頭頸部外科の症例を追加検討し,報告する.