Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 腹部悪性腫瘍の早期診断の限界と見逃してはいけない所見 肝細胞癌

(S455)

門脈腫瘍塞栓

Portal tumor thrombus: Frequently misdiagnosed US finding

石田 秀明1, 渡部 多佳子1, 大山 葉子2, 長沼 裕子3

Hideaki ISHIDA1, Takako WATANABE1, Yoko OYHAMA2, Hiroko NAGANUMA3

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田厚生医療センター臨床検査科, 3市立横手病院消化器科

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

【背景1】
現在,腹部超音波検査の施行者の主体は超音波検査技師である.この傾向はこれからも続くと思われる.ゆえに彼らが拾い上げに難渋する所見については,特にそれが進行した悪性疾患に関連したものはその対策をしっかり立てなくてはならない.
【背景2】
現在,日本超音波医学会が認定する腹部領域の認定超音波検査士数は約1万名近くおり,彼らの技術力に関して学会がある程度責任を持たなくてはいけない.しかし現実には資格習得後の技術力を評価することはなく個々人の自己管理に任せられている.
【背景3】
微小肝癌を拾い上げる技術を超音波検査士に求める以上に,大きな見逃し(またはそれに近い誤認)をしない診断力を持たせることが日常の超音波検査では重要と思われる.これが甘い状態では“超音波検査は信頼できない”という現在の批判を払拭できない.
【背景4】
筆者は全国各地で超音波検査士を対象に技術指導をしているが,拾い上げに関しては膵癌の見逃しが,超音波像読影に関しては肝腫瘍に伴う門脈腫瘍栓(PVTT)の見逃しが多い印象を持った.
【はじめに】
この様な背景から,このPVTTの問題は大きいと考え下記の方法で検討し若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】
過去1年にPVTT例中はじめに超音波検査士が検査を施行し次に,筆者が検査を補足した9施設の16例(男性11例女性5例,年齢58-82歳,平均74歳,HCC15例,CCC1例)に関し,1)超音波検査士の診断力(下記参照),2)認定超音波検査士か否か.3)その際カラードプラ検査を追加したか,を検討した.診断力は,a)肝腫瘍にもPVTTには全く気がつかなかった,b)肝腫瘍は拾い上げたがPVTTには全く気がつかなかった,c)肝腫瘍は拾い上げた.PVTTは正診できなかったが“何か異常がある”と感じた,d)肝腫瘍も拾い上げ,PVTTも正確に診断した,に大別した.
【結果】
1)4/16(25%),b)5/16(31%),c)2/16(13%),d)5/16(31%)であった.しかし残された画像にはPVTTは明瞭に記録されていた.,2)全9施設とも1-3名の認定超音波検査士がおり,今回に対象症例は認定超音波検査士が検査を行っていた.d)の5例は全て上級検査士が診断したものだった.3)d)の5例のみカラードプラ検査を追加していたが他の11例に関してはカラードプラ検査はなされていなかった.
【まとめ】
現在,超音波検査士が行う超音波検査が目指すものは早期発見ではなく,大きな所見を的確に拾い上げる技術の養成と思われる.HCCが伸展し浸潤傾向の強い状態になると,腫瘍境界が不明瞭となり拾い上げに若干難渋することは容易に想像できる.しかし,PVTTの存在からそれを推定することはそれほど無理ではないはずである.それが出来ないのが現在の認定超音波検査士のいつわざるレベルであり,その程度では信頼できる超音波検査が出来るはずもない.その現実を認識し学会が超音波検査士の教育システムを組むことが重要と思われる.