Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 肝臓の硬さ診断:その精度と使途 VTQ

(S451)

自己免疫性肝炎におけるVTQの有用性

Clinical usefulness of Virtual Touch Tissue Quantification in Autoimmune hepatitis

友國 淳子1, 佐原 朗子1, 寺尾 陽子1, 筑地 日出文1, 橋本 徹1, 高畠 弘行2, 守本 洋一2, 萱原 隆久2, 山本 博2, 詫間 義隆3

Junko TOMOKUNI1, Akiko SAHARA1, Yoko TERAO1, Hidefumi CHIKUJI1, Toru HASHIMOTO1, Hiroyuki TAKABATAKE2, Youichi MORIMOTO2, Takahisa KAYAHARA2, Hiroshi YAMAMOTO2, Yoshitaka TAKUMA3

1公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院臨床検査技術部生理検査室, 2公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院消化器内科, 3広島市立広島市民病院消化器内科

1Department of Clinical Labolatory, Kurashiki Central Hospital, 2Department of Gastroenterology, Kurashiki Central Hospital, 3Department of Gastroenterology, Kiroshima City Hiroshima Citizens Hospital

キーワード :

【目的】
Virtual Touch Tissue Quantification(以下VTQ)は,C型慢性肝炎,B型慢性肝炎の線維化の指標として確立されてきた.また,急性肝炎における治療効果判定の指標にもなりうるとの報告もある.当院でも,脾臓のVTQと食道静脈瘤との関連性なども報告してきた.しかし,自己免疫性肝炎(以下AIH)におけるVTQは病態の多様性からばらつきも大きく一定の見解が得られていない.今回我々は,AIHにおけるVTQを検討し,その重要性を示すとともに,問題を提示し,今後の方向性などを検討したい.
【対象と方法】
症例は2010年8月〜2013年11月までに当科で肝生検を施行しAIHと診断された75例.使用機種はシーメンスS2000にてVTQを測定し血液化学データ(T-Bil, AST, ALT, ALB, PLT, PT,ヒアルロン酸,4型コラーゲン7S)と組織所見(炎症パラメータはinterface hepatitis, centrilobular nercrosis, plasma cell infiltrationの3項目をそれぞれ0-3に点数化,線維化パラメータのfibrosisは新犬山分類を基に0-4に点数化)および病態との関連性を検討した.また,急性型(急性増悪を含む)と慢性型にわけて検討した.
【結果】
75例(平均年齢63.4歳,男性17例,女性58例)のうち急性型40例,慢性型35例であった.慢性型においてはVTQはfibrosis(r=0.600,p<0.033),PLT(r=-0.798,p=0.001),ヒアルロン酸(r=0.602,p=0.032),4型コラーゲン7S(r=0.821,p=0.005)など線維化パラメータと有意な相関を認めた.さらに高度線維化例(F3以上)のVTQによる判別能(AUROC)は0.905,cutoffは2.43 m/sで感度82%,特異度100%であった.急性型では炎症,線維化パラメータとも有意な相関はみられなかったが,戸田らが2004年に提唱した重症度判定基準の重症度との有意な相関が見られた(r=0.581,p=0.018).さらに重症度判定基準中等症以上のVTQによる判別能(AUROC)は0.855,cutoffは2.37m/sで感度90.9%,特異度81.8%であった.また急性型においては,初回測定時と比較して,ALTが50%低下した時点でのVTQは有意な低下を示した.(p<0.05)
【考察】
慢性型AIHにおいては,VTQは線維化との相関を示し,病態の進行度評価になりうると考える.しかし,急性型AIHでは線維化や壊死炎症などの多彩な病態が混在しており,壊死炎症が強い場合は組織所見の線維化の診断が困難であった.自験例では劇症化など重篤な転帰を認めた症例がなく全例寛解に至っているため実際の重症度評価はできなかったが,VTQが重症度判定基準と関連しており急性型AIHの病態の一面を反映している可能性が示唆された.
【結語と課題】
VTQは急性型AIHでは炎症・壊死・線維化との相関は認めないものの,重症度と相関し,炎症の改善とともに低下を示した.AIHにおいて今後,VTQが治療効果判定,予後予測になりうるか更なる検討が必要と考えられた.