Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 肝臓の硬さ診断:その精度と使途 VTQ

(S450)

急性肝不全におけるVTQの臨床的有用性 ─肝硬度と肝血行動態の関係─

Usefulness of Virtual Touch Quantication for acute liver failure

黒田 英克1, 阿部 珠美1, 及川 隆喜1, 三上 有里子2, 武田 智弓2, 諏訪部 章3, 滝川 康裕1

Hidekatsu KURODA1, Tamami ABE1, Takayoshi OIKAWA1, Yuriko MIKAMI2, Chiyumi TAKEDA2, Akira SUWABE3, Yasuhiro TAKIKAWA1

1岩手医科大学内科学講座消化器内科肝臓分野, 2岩手医科大学中央臨床検査部, 3岩手医科大学臨床検査医学講座

1Division of Hepatology, Department of Internal Medicine, Iwate Medical University, 2Central Clinical Laboratory, Iwate Medical University, 3Department of Laboratory Medicine, Iwate Medical University

キーワード :

【背景】
我々は,急性肝不全の肝硬度を測定し重症度評価や予後予測の指標となる可能性を報告してきた(Kuroda H, et al. Hepatol Res. 2014).肝硬度の上昇に寄与する因子は,壊死,炎症ら多くの因子が複雑に関与すると推測されているが,肝血流との関係は未だ明らかではない.今回我々は,急性肝不全では肝硬度の上昇に伴って肝血流動態に変化を来し,肝動脈の血管抵抗を増大させるという仮説を立て検証を試みた.
【方法】
対象は2010年4月から2014年6月まで当科にて入院加療した急性肝障害30例,急性肝不全非昏睡型12例,急性肝不全昏睡型8例である.成因はウイルス性19例,薬物性8例,自己免疫性7例,成因不明16例.男性22例,女性28例,平均年齢35.6歳.使用機種はACUSON S2000(Mochida Siemens Medical Systems).入院時にVirtual touch quantication(VTQ)を用いて剪断弾性波伝播速度(Vs値)を測定.また,超音波ドプラ法のFFT解析を用いて肝動脈ならびに門脈の収縮期血流速度(Vmax),肝動脈の血管抵抗係数(resistance index: RI)を測定し,肝機能,重症度,CTより算出した肝容積ならびに生命予後と比較した.
【結果】
(1)重症度別の入院時Vs値は,急性肝障害1.92±0.58m/s,非昏睡型2.62±0.64m/s,昏睡型3.18±0.67m/sであり重症度に伴い有意に高値を示した(p<0.01).(2)昏睡型における肝動脈のVmaxは77.1±27.3cm/sと他群より有意な上昇し,門脈のVmaxは13.7±5.1cm/sと有意な低下を認めた(p<0.05).(3)肝動脈RIは昏睡型で0.84±0.06と有意に上昇し(p<0.01),肝容積,Vs値ならびに予測劇症化確率と有意な相関関係を示した(p<0.01).(4)Vs値と肝動脈RIの昏睡型判別に関するAUROCは其々0.889,0.878であった.肝動脈RIの最適なCut off値は0.82で,感度は79.5%,特異度は86.0%であった.(5)生死別に入院時と第10病日のVs値の経時的変化を比較すると,死亡例(n=5)では3.12±0.35m/sから3.45±0.66m/sとVs値の有意な経時的上昇を認め(p<0.01),また肝動脈RIは0.85±0.08から0.87±0.06と上昇傾向を認めた.
【結語】
急性肝不全では,肝硬度の上昇に伴い肝組織の弾性低下ならびに肝動脈コンプライアンスの低下を来たし,結果として肝動脈の血管抵抗を増大させる可能性が考えられた.Vs値や肝動脈のRIは重症度や病態を反映する新たな予後予測指標で移植適応判定にも応用できる可能性がある.エラストグラフィを含めた非侵襲的な超音波検査の有用性が示唆された.