Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 肝臓の硬さ診断:その精度と使途 SWE

(S449)

NASHモデルラットの肝臓の組織弾性と病理学的変化の比較検討

Comparison of tissue elasticity and pathological changes in the liver of nonalcoholic steatohepatitis model rat

小川 紗織

Saori OGAWA

東京医科大学病院消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【目的】
非アルコール性脂肪性肝疾患の一部は,非アルコール性脂肪性肝炎(Nonalcoholic steatohepatitis:NASH)を経て肝硬変に至り,肝細胞癌を発症する.肝生検に代わる非侵襲的な診断方法としてShear wave elastography(SWE)が注目されている.しかし,SWEは組織の弾性と粘性の両者によってきまるといわれている.一方,弾性測定機は弾性のみを測定することができる.今回我々はNASHモデルラットを使用し,SWEを用いて得られた組織弾性が,弾性測定機から得られた組織弾性およびNASHの病理学的所見と相関するか検討を行った.
【方法】
Wister系ラットにMCD食を与えてNASHモデルラットを作成し,全身麻酔をかけ,開腹した.超音波Elastographyは超音波画像診断装置(Aixplorer, SuperSonic Imagine)を用いた.肝臓に超音波プローブを当てて,Shear wave(SW)の伝搬速度を測定し,弾性係数を求めた.その後ラットを屠殺し,肝臓を摘出した.弾性測定機として万能材料試験機(インストロン万能材料試験機3340,Instron)を使用した.摘出した肝臓を弾性測定機のステージ上に乗せ,サンプル直上からサンプル高の30%まで圧迫し,ヤング率を求めた.測定を終えた肝臓はホルマリン固定し,HE染色,Azan染色を行い,Brunt分類,新犬山分類,NCRN(NASH Clinical Research Network)scoreを用いて評価した.SWE測定値と弾性測定機から得られたヤング率に関して,それぞれ病理所見との相関図を作成し,F検定により等分散性検定を行った上,t検定を行った.
【結果】
NCRNの評価基準に従い評価すると,Steatosisが進行するとSWE測定値は上昇し,grade 0とgrade 3の間に有意差を認めた(p=0.01).Lobular inflammationが進行するとSWE測定値は上昇し,grade 0とgrade 3の間に有意差を認めた(p=0.02).Hepatocyte ballooningが進行するとSWE測定値は上昇し,grade 0とgrade 2の間に有意差を認めた(p=0.01).新犬山分類の評価基準に従うと,有意差は認めなかったが,Fibrosisが進行すると,SWE測定値は上昇する傾向にあった.
Steatosisが進行すると弾性測定機測定値は上昇し,grade 0とgrade 3の間に有意差を認めた(p=0.02).Lobular inflammationがgrade0,1,2へ進行すると,弾性測定機測定値は小さくなった.grade 0とgrade 2の間に有意差(p=0.001),grade2とgrade3の間に有意差(p=0.02)を認めた.Hepatocyte ballooningが進行すると弾性測定機測定値は小さくなり,grade 0とgrade 1の間に有意差を認めた(p=0.05).Fibrosisが進行すると弾性測定機測定値は上昇しF1とF2の間に有意差(p=0.009),F1とF3の間に有意差(p=0.004)を認めた.
【結論】
Fibrosisの進行は弾性を上昇させ,Steatosis, Lobular inflammation, Hepatocyte ballooningの進行は粘性を上昇させる可能性が示唆された.