Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 肝臓の硬さ診断:その精度と使途 FibroScan

(S447)

3種の肝エラストグラフィー(FibroScan M/XL probe,VTQ)の精度と使途

Feasibility and Performance of FibroScan M/XL probe and VTQ

是永 圭子1, 熊谷 恵里菜1, 2, 是永 匡紹1, 2, 澤部 祥子3, 只野 薫3, 酒井 あずさ3, 伊藤 里美3, 今村 雅俊1, 溝上 雅史1, 2

Keiko KORENAGA1, Erina KUMAGAI1, 2, Masaaki KORENAGA1, 2, Syouko SAWABE3, Kaoru TADANO3, Azusa SAKAI3, Satomi ITOH3, Masatoshi IMAMURA1, Masashi MIZOKAMI1, 2

1国立国際医療研究センター国府台病院消化器・肝臓内科, 2国立国際医療研究センター国府台病院肝炎・免疫研究センター, 3国立国際医療研究センター国府台病院中央検査部

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Kohonodai Hospital, National Center for Grobal Health and Medicine, 2The Research Center for Hepatitis and Immunology, Kohonodai Hospital, National Center for Grobal Health and Medicine, 3Department of Clinical Laboratory, Kohonodai Hospital, National Center for Grobal Health and Medicine

キーワード :

【目的】
肝エラストグラフィーとして標準的に使用されているFibroScan M probe(FS-M)・Virtual Touch Quantification(VTQ)に肥満者測定用FibroScan XL probe(FS-XL)を加えた3種のmodalityの測定精度と使途を明らかにする.
【方法】
対象は,2014年2月から6ヶ月間にFibroScan(M/XL両probe)にて肝硬度(LS)を,Virtual Touch Quantification(VTQ)でshear wave velocity(Vs)を同時測定した719である.対象の肝疾患の成因に関しては,ウイルス性肝炎259例(HCV 181例/HBV 78例),非アルコール性脂肪性肝疾患/肝炎(NAFLD/NASH)266例,対象の年齢の中央値は64歳(範囲19-91),BMIは24.4 kg/m2(13.8-46.6)だった.いずれのmodalityも10回以上測定し,中央値を結果とした.既報に従い,測定成功率が60%未満(含測定不能)and/or四方分位/中央値が30%を超える測定をinadequateとし,これらに合致しない測定をadequateとした.検討1)各modalityのinadequate率とそれに影響する因子を検討した.検討2)adequateに測定し得た結果が肝線維化を適正に反映しているか明らかにするため,NAFLD/NASH症例において測定値と線維化予測式FIB-4と比較した.高度線維化判定は既報によりFS-MのLS>9.8 kPa, Vs 1.77 m/s, FIB-4 high index>2.67,とし,高度線維化を除外するFIB4 low index<1.3も参照した.
【結果】
全症例におけるinadequate率は,VTQが25.2%(181例),FS-Mが27.1%(195例),FS-XLが28.8%(207例)でmodality間に差異はなかった.多変量解析でinadequateに影響する因子を検討したところ,VTQ・FS-Mとも皮膚-肝被膜間距離(SCD)が挙げられたが(odds ratio; VTQ1.274,FS-M; 1.201,いずれもp<0.00001),FS-XLではその影響はなかった.検者の熟練(500例以上の経験の有無)は何れのmodalityにも影響しなかった.SCD 20 mm以上の271例ではVTQ・FS-XLのinadequate率はFS-XLに比して有意に高く(VTQ 48.3%,FS-M 44.6%,FS-XL 30.6%,p<0.001),FS-XLとの併用でVTQのinadequate率は18.8%へ,FS-Mは19.2%へと有意に減少した(いずれもp<0.0001).FS-M・XLともadequateに測定された400例では両者に高い相関を認めたが(r=0.9437,p<0.0001),SCD 20 mm以上ではFS-XLのLSがFS-Mより有意に低く,特にSCD 25 mm以上の22例ではFS-M 8.6 kPa(4.0-27.4)からFS-XL 6.1 kPa(2.9-18.2)に減じた(p<0.0001).NAFLD/NASH症例のうち3種のmodalityいずれでもadequateに測定された175例中FS-Mで高度線維化と診断されたのは17例(11.5%)で,そのうちFIB4高値・低値はそれぞれ5例(29.4%)だった.両群間でVsは差がなかったが,FS-XLのLSは有意差を認めた(FIB4高値19.4 kPa(7.7-30.8)vs FIB4低値6.9 kPa(6.1-8.5 kPa), p<0.05)).VTQで高度線維化と診断されたのは175人中8例(4.5%),そのうちFIB4高値は3例(37.5%)でいずれもFS-Mでも高度線維化と診断されていた.Vs高値・FIB4低値は1例のみでFS-M 11.7 kPa・FS-XL 12.3 kPaも高値だったが,生検ではStage1だった(SCD 38.5 mm).
【考察】
FS-M・VTQともSCDが20mmを超える場合は4割を超える症例が測定信頼性に欠け,精度を向上させるためFS-XLの併用が必要である.SCD高値の場合はFS-Mは肝硬度を過剰評価し,VTQは高度線維化判定率の低さから識別能が劣る可能性があり,これらを是正するためにもFS-XLの併用は有用である.
【結論】
SCDが20mmを超える場合は,FibroScan XL probeの併用が必要である.