Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 消化管診断:超音波でどこまで診断できる?どこまで診断すべき? 大腸

(S440)

腹部超音波スクリーニング検査における進行大腸癌の検出能について

Detectability of the advanced colorectal cancer using abdominal ultrasonography

橋ノ口 信一1, 乙部 克彦1, 辻 望1, 今吉 由美1, 安田 慈1, 日比 敏男1, 熊田 卓2, 豊田 秀徳2, 多田 俊史2, 金森 明2

Shinichi HASHINOKUCHI1, Katsuhiko OTOBE1, Nozomi TSUJI1, Yumi IMAYOSHI1, Shigeru YASUDA1, Toshio HIBI1, Takashi KUMADA2, Hidenori TOYODA2, Toshifumi TADA2, Akira KANAMORI2

1大垣市民病院診療検査科, 2大垣市民病院消化器内科

1Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
近年,消化管領域における腹部超音波検査(以下US)の有用性が多く報告されるようになり,その役割が増している.我々は,US時に消化管のスクリーニングを行っており,以前より進行大腸癌の検出率の向上に取り組んできた.また,最近のCT検査(Computed Tomography)はマルチスライスCTの登場により,時間および空間分解能の高い画像が撮像可能となり,消化管領域においても頻用されている.今回,USにおける進行大腸癌の検出率をCTと比較検討したので報告する.
【対象および方法】
対象は,2012年4月から2014年9月までに,当院で下部消化管内視鏡検査または注腸X線検査,CTで大腸の検索が行われ,かつUSが各種検査より先行して施行された5,581例である.USと各種検査の期間は1ヵ月以内であり,進行大腸癌と診断され手術が行われた540病変のうち,単純CT検査(以下PCT)および造影CT検査(CECT)が施行され,対比可能であったのは200病変である.対象症例の内訳は,男女比123:77,平均年齢70.3歳(39〜90歳),腫瘍径中央値40 mm(15〜100 mm)であった.USは全例無処置にて実質臓器を観察後,消化管をスクリーニング走査し,大腸壁の層構造が消失した限局性の壁肥厚像(5 mm以上),壁硬化像,漿膜の不整,内腔の狭窄の有無の所見により総合的に判断した.CTは単純と平衡相(造影は600 mgI/kg,1.0 mL/sec,delay time 150 sec)の撮像を行い,再構成間隔5.0 mmのAxial像で評価し,大腸壁の肥厚や腫瘤の有無,造影効果の増強の程度等の所見により,放射線科読影医がPCT,CECTの順に総合的に判断した.
【検討項目】
1)USの検出能.2)腫瘍の存在部位(盲腸・上行結腸,横行結腸,下行結腸,S状結腸,直腸),腫瘍の大きさ(最大径),腫瘍の環周率,腫瘍の肉眼型,腫瘍の深達度による検出率の比較(US,PCT,CECT).
【結果】
1)US診断の内訳は,陽性132例,偽陽性40例,陰性5,341例,偽陰性68例であり,検出能は感度66.0%,特異度99.3%,陽性的中率76.7%,陰性的中率98.7%であった.2)CTの感度はPCT 80.5%,CECT 96.0%であった.部位別の検出率は,盲腸・上行結腸がUS 78.5%,PCT 80.0%,CECT 100%,横行結腸がUS 76.2%,PCT 85.7%,CECT 95.2%,下行結腸がUS 75.0%,PCT 91.7%,CECT 91.7%,S状結腸がUS 84.8%,PCT 89.1%,CECT 100%,直腸がUS 30.4%,PCT 69.6%,CECT 89.3%であった.USの癌部性状による検出率の比較では,環周率が大きいほど高く,肉眼型は1型で低く,深達度が進むほど高くなったが,いずれもCTより劣っていた.
【考察】
USにおける進行大腸癌の検出率はCTに比して劣っていたが,PCTと比較すると直腸を除けば有意な差はみられなかった.USはX線被曝やヨードアレルギーの問題がなく,また腹部スクリーニング時に消化管の系統的走査を追加することで,偶然的に進行大腸癌が検出されることがあり,積極的に施行されることが望ましい.我々の施設では,消化管の系統的走査法の徹底により検出率の向上が図られおり,直腸の評価が今後の課題であるが検者の技量に限らず解剖学的要因も考えられた.
【結語】
進行大腸癌に対するUSの検出は概ね良好であるが,直腸の評価が今後の課題である.