Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 造影超音波は肝腫瘍以外の消化器疾患に必要か? 消化管

(S437)

急性腸管虚血における造影超音波検査の可能性

The Advantage of Contrast Ehnhanced Ultrasound for Ischemic Mesenteric Ischemia

大堂 雅晴

Masaharu ODO

柳病院外科

Surgery, Yanagi Hospital

キーワード :

【目的】
腹部領域におけるCT,MRIでは造影検査が普及しているがUSは後発であることもありいまだ臨床医の中でも認知されていない.しかしながらCTの欠点は1:造影検査において超音波検査(CEUS)がもつリアルタイム性が造影CT(CECT)には欠如している2:腎機能障害例は原則として造影禁忌でありその場合診断能力が低下する.ことである.これまで消化器外科,救急医療の両分野に携わった経験からCECTの情報なしに診断に難渋しCEUSが緊急開腹適応判断に大きく寄与した病態は急性腸間膜虚血(AMI)であった.今回,第二世代超音波造影剤によるCEUSを急性腹症に対して行った症例を再考しこの領域におけるCEUSの必要性を検討した.
【対象】
2009年12月よりAMIを鑑別診断としが急性腹症例にUS+CEUSを行った45例について検討した.内訳はNon-obstructive mesenteric ischemia(NOMI)10例,絞扼性腸閉塞11例,鼠径ヘルニア4例,単純イレウス4例,上腸間膜動脈血栓症(SMAT)2例,大腿ヘルニア2例,腹壁瘢痕ヘルニア3例,炎症性腸疾患3例,閉鎖孔ヘルニア1例,虚血性腸炎2例,腸間膜静脈血栓症(MVT)1例,原因不明2例であった.
【方法】
B-mode(3.5-6.0 MHz)での腹部スクリーニング検査を行い腸管壁肥厚(菲薄)変化,蠕動運動不良部位にフォーカスし0.7 mlのソナゾイドをボーラス静注し動脈相での腸管造影過程を観察した.高周波探触子が使用な距離であれば7.5 MHリニア型探触子での検査を行った.腸管造影欠損部を認めた場合造影剤の再投与(0.7 ml)を行い再度確認を行った.壁の造影欠損部位が確認された場合は腸管虚血の診断にて手術の適応とし,造影効果陽性であれば集中治療の適応とした.
【結果】
腸間絞扼疾患と非絞扼性病(NOMI,SMATなど)は病態の差異があるためグループ分けし評価を行った.
【結果】
絞扼性グループにおいて造影欠損症例は全例(10例)腸管切除の適応であった.ヘルニアの2例において造影剤消失の遅延を認めたが1例は腸管温存,残る1例は腸切除の適応であった.動脈性病変の造影欠損4例(1例:手術適応困難)およびMVTでの造影欠損であり腸切除の適応となった.
【結論】
NOMIをはじめとする非絞扼性グループでは患者背景に全身状態不良,eGFR:30.32と腎機能障害症例が多く80%がCECT非適応でありCEUSが唯一の血流評価検査であった.いっぽう絞扼性グループでは腸管壊死までの過程が多段階である特性から動脈性造影効果が認められた場合でも腸管切除適応であるケースが確認された.絞扼性症例においては腸管内に流入した造影剤の継時的観察評価を必要とした.
AMIにおけるCEUSは特に広義のNOMIを含めた動脈性血流障害例において腸切除適応に対する判断が明確であり超音波専門医以外でも検査診断が可能と考えられた.さらにUSのリアルタイム性,低侵襲性また救急医療に必要な迅速性を兼ね備えており今後USでの造影適応臓器,病態として拡大可能な分野であると考えられた.