Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 造影超音波は肝腫瘍以外の消化器疾患に必要か? 胆嚢

(S436)

高音圧造影モードを用いた,造影超音波検査による胆嚢隆起性病変の鑑別診断

Differential diagnosis of polypoid lesions of the gallbladder using contrast-enhanced ultrasonography with high mechanical index contrast mode

三輪 治生1, 2, 沼田 和司2, 石井 寛裕2, 金子 卓2, 杉森 一哉2, 田中 克明2, 前田 愼1

Haruo MIWA1, 2, Kazushi NUMATA2, Tomohiro ISHII2, Takashi KANEKO2, Kazuya SUGIMORI2, Katsuaki TANAKA2, Shin MAEDA1

1横浜市立大学医学部消化器内科学, 2横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター

1Department of Gastroenterology, Yokohama City University School of Medicine, 2Gastroenterological Center, Yokohama City University Medical Center

キーワード :

【背景と目的】
胆嚢病変の診断において,腹部超音波検査は欠かせないモダリティである.しかしながら,造影超音波検査による鑑別診断に関しては,定まった見解が得られておらず,保険承認もされていない.この原因として,胆嚢病変では背景のB-modeの影響を強く受けることに加え,疾患ごとの造影効果の差異が乏しく,限られた情報しか得られない点が挙げられる.一方,我々は,肝腫瘍や膵腫瘍において,高音圧造影モードを用いる事により,背景のB-modeの影響を減弱し,病変内部の微細な血管像の検出が可能であると報告してきた.今回我々は,高音圧造影モードを用いた造影超音波検査による胆嚢隆起性病変の鑑別診断について報告する.
【対象と方法】
2007年3月から2014年9月までに当施設で造影超音波検査を施行し,診断確定に至った胆嚢隆起性病変31例を対象とした.内訳は,胆嚢癌14例,非腫瘍性ポリープ17例であった.超音波診断装置は,B-modeではGE Healthcare社製LOGIQ E9またはLOGIQ7,造影超音波検査ではLOGIQ7を使用した.初めに,B-modeで胆嚢全体を詳細に観察し,隆起性病変の長径を計測した.続いて,造影超音波検査では,ソナゾイド® 0.2 ml/bodyを静注したのち,Contrast Harmonic Angio mode(Mechanical index; 0.6-1.0)で間歇送信または3次元自動スキャンにより画像を取得した.造影直後から3分後までに数回の画像取得を行い,病変内部の血管像と病変全体の染影が最も鮮明に得られる画像を選別した.B-modeと造影超音波検査について,それぞれblind readingを行い,鑑別診断における有用性をretrospectiveに評価した.なお,ソナゾイド®の投与に際して,当院倫理審査委員会の承認を受け,患者の同意を得て検査を施行した.
【結果】
対象の平均年齢は65.7歳,性別は男性17例,女性14例であった.B-mode:病変の長径は平均17.4mm(±7.7)であり,胆嚢癌23.4 mm(±7.6),非腫瘍性ポリープ12.5mm(±3.0)と,胆嚢癌で有意に大きい結果であった(P<0.001).病変の形状は,胆嚢癌では79%(11/14)が広基性,非腫瘍性ポリープでは65%(11/17)が有茎性であった(p<0.05).造影超音波検査:造影により全例で病変内部の微細な血管を検出した.血管の形状を,枝分かれを伴う線状のlinear vessel,不規則な血管で構成されるirregular vesselの2通りに分類したところ,胆嚢癌では93%(13/14)がirregular vessel,非腫瘍性ポリープでは88%(15/17)がlinear vesselであった(P<0.001).また造影により茎部を流入する血管の有無が判別でき,病変の形状がより明瞭となった.造影後の形状は,胆嚢癌では86%(12/14)が広基性,非腫瘍性ポリープでは94%(16/17)が有茎性であった(p<0.001).病変の形状が広基性のものを胆嚢癌とした場合の感度,特異度,正診率は,B-mode;79%,65%,71%,造影超音波検査;86%,94%,90%であり,造影により診断能が向上した.
【結語】
高音圧造影モードを用いた造影超音波検査は,病変内部の微細な血管や茎部の流入血管などを描出でき,鑑別診断に有用であった.