Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 造影超音波は肝腫瘍以外の消化器疾患に必要か? 膵臓

(S433)

小膵癌の診断における造影ハーモニックEUSの臨床的有用性

Contrast-enhanced harmonic EUS hepls diagnosis of small pancres cancer

江崎 健, 塩見 英之, 酒井 新, 寺島 禎彦, 小林 隆, 竹中 完, 有坂 好史, 岡部 純弘, 久津見 弘, 東 健

Takeshi EZAKI, Hideyuki SIHOMI, Arata SAKAI, Sadahiko TERASHIMA, Takashi KOBAYASHI, Mamoru TAKENAKA, Yoshihumi ARISAKA, Sumihiro OKABE, Hiromu KUTSUMI, Takeshi AZUMA

神戸大学医学部消化器内科

Gastroenterology, Kobe University

キーワード :

【背景・目的】
EUSは高い空間分解能を有しており,20mm以下の微小な膵腫瘤性病変の診断において,非常に有用な診断法とされている.しかし,慢性膵炎等で背景膵の変化により評価が困難な場合では,術者の主観による影響を受けやすく,質的診断が困難な場合も存在する.そこで我々はより客観的な評価を行う目的で,造影ハーモニックEUS(CH-EUS)を行い,その造影イメージをTime intensity curve(TIC)を用いて定量的に解析し,その有用性を検討した.
【対象・方法】
対象は2010年6月から2014年7月にCH-EUSを施行した低エコー腫瘤130例のうち,20mm以下で,さらにTICを用いて解析を行った43例(膵癌(PC)22例,腫瘤形成性膵炎(MFP)12例,膵内分泌腫瘍(PNET)9例)とした.超音波内視鏡GF-UE260-AL5(OLYMPUS),GF-UCT260(OLYMPUS),超音波診断装置ProSound SSDα10(ALOKA)を使用し,Sonazoid(第一三共製薬)を0.015 mg/kgで投与し,MI値0.3で撮像した.病変部とその乳頭側の正常膵実質にregion of intensity(ROI)を3か所ずつ設定してそれぞれのTICを作製し,そのintensityの比を比較検討した.(図1)さらにPC群とMFP群の2群間でROC曲線を作成し,PCのカットオフ値,感度,特異度,正診率を評価した.
【結果】
造影開始60秒後の各疾患のintensity比はPC:0.49±0.18,MFP:0.87±0.13,PNET:1.17±0.35であり,PCは乏血性パターン,PNETは富血性パターンを示し,各疾患間で有意差を認めた.また,ROC曲線によるPCとMFPの2群間での検討では,カットオフ値0.786でPCの診断感度は100%,特異度は83.3%,正診率94.1%であった.さらに同様の検討を,造影開始後から造影態度が安定する90秒後までのTICのAUC(area under curve)を用いて行ったところ,AUC比はPC:0.49±0.18,MFP:0.87±0.13,PNET:1.17±0.35となり,各疾患間で有意差を認めた.また,ROC曲線によるPCとMFPの2群間での検討では,カットオフ値0.766でPCの診断感度は100%,特異度は83.3%,正診率94.1%であり,造影開始後60秒後の評価と同様に高い正診率を示した.
【結論】
TICを用いた定量的な解析は,背景膵の変化に関わらず20mm以下の微小な膵腫瘤性病変の診断に有用であった.特にPCの正診率が高く,小病変でも高い診断能を有していることから,小膵癌の鑑別診断においてその有用性が期待できる.