Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 造影超音波は肝腫瘍以外の消化器疾患に必要か? 膵臓

(S432)

膵腫瘍の診断における造影超音波検査の有用性

Usefulness of contrast-enhanced US for the evaluation of pancreatic tumor

福田 順子1, 仲尾 美穂1, 石田 伸子1, 岡垣 すえつみ1, 吉岡 ふみ1, 高倉 玲奈2, 田中 幸子3, 蘆田 玲子1, 井岡 達也1, 片山 和宏1

Junko FUKUDA1, Miho NAKAO1, Nobuko ISHIDA1, Suetsumi OKAGAKI1, Fumi YOSHIOKA1, Rena TAKAKURA2, Sachiko TANAKA3, Reiko ASHIDA1, Tatsuya IOKA1, Kazuhiro KATAYAMA1

1地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター検診部, 2大阪がん循環器病予防センター内視鏡検診部, 3大阪がん循環器病予防センター所長

1Dept. Cancer Survey, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, 2Department of Endoscopy, Osaka Center for Cancer and Cardiovascular Disease Prevention, 3The Head, Osaka Center for Cancer and Cardiovascular Disease Prevention

キーワード :

【はじめに】
体外式超音波検査(US)は膵腫瘍の画像診断の中で最も非侵襲的な検査である.膵嚢胞や主膵管拡張を認めた膵癌高危険群の経過観察や膵精査目的の検査として,当院では膵の描出能を向上させる工夫をした膵精密超音波検査(膵US)を実施している.膵USで嚢胞内や主膵管内の結節を疑う像や膵実質内の低エコー像の出現等の悪性化を疑う所見を認めた際には一次精査として,積極的に造影超音波検査(造影US)を活用している.
【目的】
膵USで悪性を示唆する所見を指摘した症例における,侵襲性の高い二次精査への症例選択に対する造影USの有用性を検討する.
【対象】
膵USで悪性を示唆する所見を指摘し,2007年1月から2014年7月までに造影USを行った症例.
①膵に嚢胞を認め,内部に結節性病変を疑った115例(男64,女51,年齢41-84歳平均69.6歳)を対象とした.USで疑った結節の最大径は3-40 mm(平均8.1 mm).
②膵に10 mm以下の低エコー像を疑った117例(男50,女67,年齢33-84歳平均67.0歳)を対象とした.USで疑った低エコー像の最大径は3-10 mm(平均7.8 mm).
【方法】
造影剤は肝限局性病変の鑑別ないしは転移性肝癌の存在診断を主目的として文書による同意の上ソナゾイドを使用した.使用機種はAplio500(東芝),LOGIQ7(GE),Ascendus/EUB8500(日立),MIは0.20付近,Focusは関心病変の下端からやや深めに設定,1回の投与量は0.010 ml/kgまたは0.015 ml/kg.
【結果】
①造影前に結節を疑った115例中造影USで51例に染影を認め,嚢胞内結節と診断した.51例中35例にERCPを実施し,17例に当院で切除手術が施行された.14例は膵管内乳頭粘液産生腫瘍(IPMN)由来癌(IPMC),1例はIPMN(borderline malignancy),2例はIPMAであった.造影USで嚢胞内結節を指摘したが,非切除の34例(膵液細胞診陰性18例とERCP未実施16例)は経過観察中である.結節が染影されずデブリや隔壁の一部と診断した64例についても経過観察中であるが,経過中癌と診断された例はまだない.
②造影前に10 mm以下の低エコー像を疑った117例の造影US所見は,hypo vascular 50例,iso vascular 61例,hyper vascular 6例であった.hypo vascular 50例中ERCPまたはEUS-FNAを28例に実施し,16例(57.1%)が膵液細胞診またはEUS-FNAで悪性と診断され,内12例に切除手術が行われた.切除膵癌の内訳は通常型膵癌8例,IPMN由来癌4例でstage0が2例,Ⅰが7例,Ⅲが3例であった.膵癌切除例での他検査は,EUSとCTは全例,MRは5例に実施されたが,癌を疑うSOLを指摘できたのは,EUSは12例(100%),CTは2例(16.7%),MRは1例(20%)であった.この他,膵液細胞診でsusp.の1例に切除手術が行われたがIPMNであった.膵液細胞診またはEUS-FNAで悪性が否定された11例とそれらを未実施の22例は経過観察中である.iso vascularの61例中4例はEUSで神経内分泌腫瘍(NET)疑いと診断され,hyper vascularの6例中1例に切除手術が行われNET,残る5例中1例はNET疑い,4例は膵炎等を疑って経過観察中である.iso vascular61例,およびhyper vascular 5例の計66例については経過中癌と診断された例はまだない.
【結語】
嚢胞内に結節性病変を疑った症例において,造影USを実施することにより,デブリとの鑑別や複雑な隔壁を有する嚢胞において形状が明瞭になり,結節性病変との鑑別に有用であった.また,10mm以下の低エコー像を疑った症例において,hypo vascularな病変から早期の膵癌を発見することが可能であった.体表USで検出した悪性を示唆する病変の中から,侵襲性の高い二次精査への症例選択に対して,造影USは有用であると考える.