Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
消化器 造影超音波は肝腫瘍以外の消化器疾患に必要か? 膵臓

(S432)

急性膵炎重症度判定に造影超音波を多角的に応用する試み

Multidirectional assessment of severity for acute pancreatitis as studied by contrast-enhanced ultrasonography

阪上 順一, 保田 宏明, 十亀 義生, 加藤 隆介, 土井 俊文, 三宅 隼人, 片岡 慶正, 坂井 貴光, 伊藤 義人

Junichi SAKAGAMI, Hiroaki YASUDA, Yoshio SOGAME, Ryusuke KATO, Toshifumi DOI, Hayato MIYAKE, Keisho KATAOKA, Takamitsu SAKAI, Yoshito ITOH

京都府立医科大学消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

【目的】
急性膵炎診療ガイドライン2010では「超音波検査はまず最初に行われる検査の一つである」と記載されている(推奨度A).膵壊死に陥ると致命率が15〜20%に上ることも知られている.急性膵炎重症度判定(2008)では造影CTでの膵造影不良域と炎症膵外進展度にてGrade2以上の場合,重症急性膵炎と判定される.一方,急性膵炎に併発する血流障害である非閉塞性腸管虚血は致死的合併症のひとつである.我々は,超音波診断を用いた重症度,膵虚血,腸管虚血の判定に造影超音波を応用してきたが,その有用性と限界について報告する.
【方法】
造影超音波を実施した急性膵炎重症度判定(2008)での軽症急性膵炎(MAP)21例,重症急性膵炎(SAP)9例を対象とし,急性膵炎を疑ったが急性膵炎が否定された対照(NP)66例と比較検討した.受診時(1)ペルフルブタンを0.015 ml/kgをbolus静注し,上腸間膜動静脈のTICから腸管循環時間(ICT)を測定した.速やかに膵をスキャンし,バースト後のavi画像から(2)膵parametric画像(PUS)を作成し膵虚血部位の判定した.(3)腎下極をスキャンして腎下極以遠にある脂肪織造影不良の有無を確認した.急性膵炎は以後の造影CTにて浮腫性(EAP)と壊死性(NAP)に分類した.
【成績】
PUSでは膵灌流不良域が明瞭に視覚化でき,NAP判定と合致していた.造影超音波では,前腎傍腔や結腸間膜根部の炎症膵外進展度判定は困難であったが,腎下極以遠の判定は腸管ガスの影響を受けないため判定可能であった.ICTはSAPではMAPに比して短縮しており(P=0.06),特にNAPではEAPに比して有意性の高い短縮がみられた(P=0.03).
【結論】
急性膵炎の超音波診断では,造影超音波を加えることにより膵虚血,重症度判定をベッドサイドで推定できる.腎下極以遠の炎症波及は単独でSAPと診断でき,腸管ガスのない側腹部で可能なため有益な手法である.NAPやSAPではICTが短縮する傾向にある.