山田 博胤^{1, 2}, 楠瀬 賢也¹, 坂東 美佳¹, 林 修司², 西尾 進², 山尾 雅美², 天野 里江², 鳥居 裕太¹, 添木 武¹, 佐田 政隆¹

Hirotsugu YAMADA^{1, 2}, Kenya KUSUNOSE¹, Mika BANDO¹, Shuji HAYASHI², Susumu NISHIO², Masami YAMAO², Rie AMANO², Yuta TORII¹, Takeshi SOEKI¹, Masataka SATA¹

¹徳島大学病院循環器内科, ²徳島大学病院超音波センター

¹Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, ²Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital

キーワード :

【背景】
血流ドプラ法により得られる僧帽弁口血流速波形は，左房-左室連関の血行動態を反映している．一方，組織ドプラ法を用いて得られる僧帽弁輪運動速波形から，左室壁運動が定量的に評価できる．そして，これらを組み合わせて得られる，僧帽弁口血流（E）および僧帽弁弁輪運動（e’）速波形の拡張早期波の開始時間の差（TE-e’）は，壁運動-血流連関の情報を提供する．
【目的】
心内圧指標および心エコードプラ指標が前負荷増大時にどのように変化するかを観察し，両者の相関を検討すること．特に，左室拡張末期圧（LVEDP）とTE-e’の関連について検討すること．
【方法】
臨床上の必要性から冠動脈造影を施行した患者（42例，平均年齢70±6歳）を対象とした．Millarカテーテルを用いて得られた左室圧曲線からtau，LVEDPを計測し，Dual Doppler systemを用いて同一心周期におけるTE-e’を計測した．下肢陽圧負荷（LPP）を用いて前負荷を増大させ，各種指標の変化を検討した．
【結果】
LPPによりLVEDPおよびpre A圧が増大したが，tauは変化しなかった．また，E，E/AおよびE/e’が増大，TE-e’が延長した．LVEDPとこれら心エコー指標は相関を認めたが，最も相関係数が大きい指標はTE-e’であった．LPPによる指標の変化をΔとすると，ΔLVEDPとΔTE-e’は密に相関した．ROC解析において，TE-e’＞31msecはLVEDP≧15 mmHgを最もよく予測する指標であった．TE-e’の検者間誤差は級内相関係数（ICC）=0.95で，検者内誤差はICC=0.98であった．
【結語】
TE-e’はLVEDPと密接な関連があり，前負荷の変動に伴うTE-e’の延長とLVEDPの上昇は相関した．LVEDP上昇の診断において，各種心エコー指標のうちTE-e’が最も優れていた．また，Dual Doppler法を用いること，このTE-e’を再現性良く計測することができる．