Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

奨励賞演題
腎・泌尿器 

(S413)

巨大腎結石に対するReal-time virtual sonography(RVS)を用いた新しい治療法の確立

Developments in the technique of Real-time virtual sonography(RVS)guided renal access for percutaneous nephrolithotomy against large renal calculi

濵本 周造

Shuzo HAMAMOTO

JA愛知厚生連豊田厚生病院泌尿器科

Department of Urology, Toyota Kosei Hospital

キーワード :

【背景と目的】
20mm以上の巨大な腎結石は,疼痛や感染を引き起こすだけではなく,腎機能の低下につながるため,積極的な治療が必要である.その第一選択は,経皮的に内視鏡を挿入して行う経皮的腎砕石術(PNL)とされるが,腎臓に太いトラクトを挿入するため,輸血を要する出血が重篤な合併症となる.出血は,腎実質内の葉間動静脈の損傷が一原因であり,血管の少ない腎乳頭円蓋部にトラクトを挿入することが求められる.私たちは,以前より超音波ガイド下に腎瘻穿刺を行ってきたが,超音波は血流動態を含めたリアルタイムな画像を観察できる利点を持つ反面,その精度は患者の年齢や体格,術者の技量に左右され,また得られた断層面は客観性にかけるという欠点がある.そこで私たちはこれらの問題を解決すべく,CTデータと超音波のリアルタイムな画像を融合させるシステム(Real-time Virtual Sonography:RVS)を用いて腎瘻穿刺を行う方法を確立したため,その治療成績や有用性につき評価した.
【対象と方法】
2014年4月から11月までの間に,PNLを行う際に,本穿刺方法を行った患者11例をレトロスペクティブに解析した.平均結石最大径は38.9mmであった.術前日に手術を想定した体位にて造影CTを撮影し,RVSに使用した.手術は,腹臥位にて経尿道的に軟性尿管鏡を挿入し,腎瘻穿刺を予定とする腎杯の観察を行いながら,別の術者がRVSを用いて,22G針による腎瘻穿刺を行った(Figure).目的の腎杯乳頭部を穿刺針が貫くまで繰り返し穿刺し,その後に腎瘻シースを挿入し,PNLを行った.手術1ヶ月後のKUBと超音波で4mm以上の残石がないものをStone freeとした.
【結果】
すべての症例で腎杯の乳頭円蓋部にトラクトを挿入できた.平均穿刺回数は1.4回.平均のPNL手術時間は112.5分,Hb低下量は0.73g/dL,入院期間は5.2日であった.輸血を要する症例を含め,術中・術後に重篤な合併症は認めなかった.9例(81.8%)で手術1ヶ月後のStone freeが得られた.
【考察】
腎結石治療において,RVSを用いた画期的な腎瘻穿刺法を初めて確立した.血流動態を含めた超音波のリアルタイムな画像と,空間分解能にすぐれるCT画像情報の相互補完を利用することで,術者の経験に頼らない,より確実な腎杯乳頭部への穿刺を誘導することが可能となった.本術式の確立により,術中の出血のリスクが軽減され,巨大な腎結石に対する低侵襲で効率的な治療が期待された.