津田 桃子¹, 西田 睦^{2, 3}, 佐藤 恵美^{2, 4}, 工藤 悠輔^{2, 3}, 安部 崇重⁵, 土屋 邦彦⁵, 守屋 仁彦⁵, 篠原 信雄⁵, 加藤 元嗣¹, 坂本 直哉¹

Momoko TSUDA¹, Mutsumi NISHIDA^{2, 3}, Emi SATO^{2, 4}, Yusuke KUDO^{2, 3}, Takashige ABE⁵, Kunihiko TSUCHIYA⁵, Kimihiko MORIYA⁵, Nobuo SHINOHARA⁵, Mototsugu KATO¹, Naoya SAKAMOTO¹

¹北海道大学病院消化器内科, ²北海道大学病院超音波センター, ³北海道大学病院検査・輸血部, ⁴北海道大学病院放射線部, ⁵北海道大学病院腎泌尿器外科

¹Department of Gastroenterology and Hepatology, Hokkaido University Hospital, ²Diagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital, ³Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital, ⁴Department of Radiology, Hokkaido University Hospital, ⁵Department of Renal and Genitourinary Surgery, Hokkaido University Hospital

キーワード :

【はじめに】
経腹的超音波検査（US）による膀胱の観察はどこの施設でも行うことが可能で，簡便かつ低侵襲な検査である．また膀胱癌の好発部位はUSで容易に観察可能である．USは膀胱癌の早期発見に有用であるという報告は散見されるが，USの特異度や正診率を評価した報告は我々が検索した範囲ではない．USによる膀胱癌の診断能と診断時のstageを検討することでUSスクリーニングが膀胱癌の診断に有用かを検討する．
【対象】
2008年3月から2014年3月にUSを施行し，施行後3ヶ月以内に血尿，尿閉などで膀胱鏡を施行した40例（男性27例），年齢は62.2±13歳（平均±SD）を後方視的に検討した．画像にて尿の貯留が不十分な例，膀胱癌がUS前に疑われた，または既往のある例は除外した．膀胱癌の確定診断は経尿道的腫瘍切除術（TUR-BT）による組織学的診断，陰性診断は膀胱鏡で行った．
【方法】
使用装置：東芝AplioXV, XG, 500, GE Logiq E9
腹部ルーチン走査法：上腹部臓器観察後，大動脈，骨盤腔内臓器，消化管の系統的走査を施行した．
膀胱癌陽性は膀胱内の乳頭状から広基性隆起性病変または限局的な肥厚またはドプラにて血流信号ありのうち一つ以上を認めた場合を，陰性は，陽性所見を認めないものとした．
【結果】
USの膀胱癌診断は真陽性5例，真陰性29例，偽陰性3例，偽陽性3例で，感度62.5％，特異度90.6％，陽性的中率62.5％，陰性的中率90.6％，正診率85.0％であった．偽陽性1例は腺性膀胱炎，2例は乳頭腫であり，膀胱鏡にても膀胱癌との鑑別は困難とされている．そこでこれらの3例を真陽性とすると感度72.7％，特異度100％，陽性的中率92.5％，陰性的中率90.6％，正診率92.5％と良好な診断能であった．偽陰性は頂部や側壁の平坦型の癌2例，原病にリンパ腫があり，原病の浸潤を疑った1例であった．またUSで指摘した膀胱癌は全例壁内深達度Taの筋層非浸潤性膀胱癌であった．
【考察】
USによる膀胱癌の特異度は高く，今回の検討では全例早期癌であった．低侵襲なUSは早期膀胱癌の発見も可能で，スクリーニング検査の一つとして有用であると思われた．