Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

奨励賞演題
消化器 

(S411)

経時的US-elastographyによる食道胃接合部機能評価の検討

Functional evaluation of esophagogastric junction by US-elastography

須原 寛樹1, 廣岡 芳樹2, 川嶋 啓揮1, 大野 栄三郎1, 杉本 啓之1, 林 大樹朗1, 桑原 崇通1, 森島 大雅1, 中村 正直1, 後藤 秀実1, 2

Hiroki SUHARA1, Yoshiki HIROOKA2, Hiroki KAWASHIMA1, Eizaburo OHNO1, Hiroyuki SUGIMOTO1, Daijyuro HAYASHI1, Takamichi KUWAHAWA1, Tomomasa MORISHIMA1, Masanao NAKAMURA1, Hidemi GOTO1, 2

1名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, 2名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部

1Gastroenterology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Division of Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【目的】
内視鏡的に診断される胃食道逆流症(GERD: Gastroesophageal reflux disease)や内視鏡的には異常を示さない機能性消化管障害である非びらん性胃食道逆流症(NERD: non-erosive reflux disease)はともに胸焼け等を主症とする疾患群である.これら疾患の診断は内視鏡検査や食道pHモニタリング・食道内圧測定など非生理的な条件下で行われる手法によってなされている.非侵襲的で生理的条件下に近いと考えられる経腹壁的elastography(US-elastography)を用いた食道胃接合部(EGJ: esophagogastric junction)の硬度変化から推測される蠕動回数と各種胃・食道疾患との関連性から食道機能評価の可能性について検討した.
【方法】
対象は2011年7月から2014年12月までに当院にてUS-elastographyに引き続き上部消化管内視鏡検査(EGD)を同日に実施した症例中,US-elastographyにてEGJを15秒以上連続観察し得た39症例である.内視鏡的にGERDと診断された症例が8例(男性2例,女性6例,年齢62.9±5.18歳),非GERD症例が31例(男性14例,女性17例,年齢62.2±14.7歳)であった.GERDの重症度はGrade M 4例,Grade A 2例,Grade B 2例であった(改定ロサンゼルス分類).GERD群と非GERD群におけるUS-elastography所見を比較検討した.US-elastographyの実際を示す.最初に,心窩部縦走査における吸気時の観察でEGJ(肝左葉外側区域背側で胃と交通する高エコー部分をEGJと定義した.)と肝外側区域を描出した.EGJおよび硬度の基準となる肝外側区域(基準硬度)にそれぞれROIを設定し,EGJの経時的硬度変化を基準のROI(外側区域に設定したROI)との比により算出した.各症例間での測定時間を一致させるために,EGJの硬度変化を30秒換算した波形数として算出し,GERDとの関連を検討した.EGJの30秒換算波形数とGERDの重症度,慢性胃炎の有無,食道裂孔ヘルニアの有無,糖尿病の有無,年齢(65歳以上・未満),BMI(25以上・未満)の項目について検討した.使用機器はGE社製LOGIQE9で,Direct-strain法によるelastographyを用いた.本装置は関心領域(ROI)を複数設定可能で,設定されたROI間の差や比(differences and ratios of elasticity indices)を自動的に算出し,モニター上にグラフィック表示可能である.また,最大で120秒の連続測定が可能である.なお,本研究は当院IRBの承認のもと実施している.
【結果】
30秒換算波形数はGERD群で6.72±0.72回,非GERD群で8.87±2.35回とGERD群で有意に減少(P=0.0197)していた.またGERDの各Grade群間での検討では,現時点では有意差は認めなかった,その他の項目でも波形数と各項目間に有意差は認めなかった.
【結論】
GERDでは食道蠕動障害を呈するとされており,本検討においてもGERD症例では食道蠕動運動を示すと考えられる波形数の減少が示された.経時的US-elastographyにより,非侵襲的かつ生理的条件下で食道機能を評価できる可能性が示唆された.