Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

奨励賞演題
消化器 

(S410)

胸腹水を有する肝硬変患者の横隔膜交通症診断におけるSonazoid®の有用性

Contrast enhanced sonography with perflubutane to diagnose porous diaphragm syndrome for cirrhotic patients with hydrothorax and ascites

三好 謙一, 孝田 雅彦, 岡本 敏明, 程塚 正則, 藤瀬 幸, 的野 智光, 杉原 誉明, 村脇 義和

Kenichi MIYOSHI, Masahiko KODA, Toshiaki OKAMOTO, Masanori HODOTSUKA, Yuki FUJISE, Tomomitsu MATONO, Takaaki SUGIHARA, Yoshikazu MURAWAKI

鳥取大学医学部附属病院機能病態内科学

Multidisciplinary Internal Medicine, Tottori University School of Medicine

キーワード :

【目的】
肝性胸水は非代償性肝硬変患者に認められ,その発生には2つの機序が想定されている.1つは門脈圧の亢進に伴いリンパ管を介して生じるもの,もう1つは横隔膜の小孔を通じて陰圧である胸腔に腹水が流出する横隔膜交通症(以下交通症)である.今回我々は,肝性胸腹水を伴う肝硬変症例に対し,Sonazoid®造影エコーによる交通症の診断について検討した.
【対象・方法】
対象は2007年10月から2014年10月の間,胸腹水を認めた肝硬変患者11例である.平均年齢は67歳で男性9例,女性2例であった.いずれの症例も循環器,呼吸器に基礎疾患はなかった.肝硬変の病因はHCV 4例,HBV+HCV 1例,NBNC 6例であった.下腹部より経皮的にSonazoid®を0.5ml腹腔内投与し,造影モードにて胸腹腔を観察した(倫理委員会承認1702).超音波は東芝Aplio-XGを使用した.
【結果】
全例で腹水全体が造影され,7例(63.6%)でSonazoid®が横隔膜の一部より胸腔へ噴出し,交通症と診断した(図).また3例で胸腔内にわずかな点状のSonazoid®を観察したが,流出経路は確認できず交通症とは診断しなかった.残りの1例では胸腔内にソナゾイド®の造影効果は全く認めなかった.全例において検査に関連した合併症はなかった.交通症と診断した7例中3例で交通部を確認し,横隔膜縫縮術を施行した.1例で胸水の完全消失,2例で胸水の減少が得られた.また残り1例では胸腔鏡で交通部を同定できず胸膜癒着療法を行ったが,胸水の減少は得られなかった.他の交通症3例は肝予備能の高度低下や進行肝細胞癌のため手術不能であり,交通症と診断できなかった4例と併せ保存的治療を継続した.交通症と診断した7例中4例で横隔膜に近接した部位の肝細胞癌に対してラジオ波焼灼療法を行っていた.
【考察】
交通症は横隔膜の小孔を通じて貯留液が胸腹腔内を交通して生じる病態である.横隔膜の小孔は一般的に小さくCT,MRIでの同定は困難なため,従来ラジオアイソトープやインドシアニングリーンを用いて診断されていた.しかし,その診断精度は満足のいくものではなかった.今回,Sonazoid®を用いた造影エコーにより胸腹腔の交通を低侵襲かつリアルタイムに同定できた.