Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

奨励賞演題
循環器 

(S408)

冠血流予備量比と収縮早期左室心筋伸展(Early systolic lengthening)の関連について

Relationship between fractional flow reserve and early systolic lengthening in patients with stable angina pectoris

南澤 匡俊, 小山 潤, 池田 宇一

Masatoshi MINAMISAWA, Jun KOYAMA, Uichi IKEDA

信州大学医学部循環器内科学教室

Department of Cardiovascular Medicine, Shinshu University School of Medicine

キーワード :

【目的】
冠動脈疾患患者において,安静時心エコーにて心尖部長軸方向へのストレイン(longitudinal strain)が収縮期早期に伸展(early systolic lengthening: ESL)していること,さらにESL持続時間の延長が冠動脈病変の検出にpost-systolic shorteningより有用であることが報告された(J Am Coll Cardiol 2012;60:1086).しかし,心筋虚血診断法として確立されている冠血流予備量比(fractional flow reserve: FFR)とESLの持続時間との関連についての報告はない.本研究の目的は,ESLが心筋虚血診断の予測因子として有用かを検討することである.
【対象】
安定狭心症患者のうち,待機的経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)の施行前にFFRを測定した連続40例.心房細動,心筋梗塞既往の症例は除外した.
【方法】
全例に対して,PCI標的血管に対するFFRとPCI前日に経胸壁心エコー検査を施行した.2Dスペックルトラッキング法を用いて,心尖部3断面よりglobal longitudinal strain(GLS),ESLの持続時間,ESLのpeak strainを解析した.ESLの持続時間はQRS開始からESLのピークまでの時間と定義した(左図参照).FFR≥0.8(17例,非虚血群),<0.8(23例,虚血群)の2群にわけてGLS,ESLの持続時間の比較をした.
【結果】
対象の平均年齢は72±8歳,平均左室駆出率は67±8%であった.FFRとGLS,ESLの持続時間,ESLのpeak strainはいずれも有意な相関を認めなかった(全てR2<0.1,p>0.1).また,2群間において,GLS(非虚血群:-15.2±1.9%vs.虚血群:-16.4±2.5%,p = 0.11),ESLの持続時間(非虚血群:36.4±23.2 ms vs.虚血群:39.6±29.5 ms, p = 0.71)は有意な差を認めなかった.
【結論】
ESLはFFRと有意な相関を認めず,安定狭心症患者に対する心筋虚血予測指標としてESLの有用性は明らかではなかった.