英文誌(2004-)
奨励賞演題
基礎
(S406)
治療用バブルリポソームの生体内血管中での捕捉のための超音波照射条件の検討
Study for conditions of ultrasound emission to trap bubble liposome for treatment in blood flow
澤口 冬威1, 保坂 直斗1, 宮澤 慎也1, 望月 剛1, 桝田 晃司1, 小田 雄介2, 鈴木 亮2, 丸山 一雄2
Toi SAWAGUCHI1, Naoto HOSAKA1, Shinya MIYAAWA1, Takashi MOCHIZUKI1, Kohji MASUDA1, Yusuke ODA2, Ryo SUZUKI2, Kazuo MARUYAMA2
1東京農工大学大学院生物システム応用科学府生物システム応用科学専攻, 2帝京大学薬学部薬物送達学研究室
1Bio-Applications and Systems Eng, Grad. School of Bio-Applications and Systems Eng., Tokyo Univ. of Agriculture and Technology, 2Laboratory of Drug and Gene Delivery Research, Department of Biopharmaceutics, School of Pharmaceutical Sciences, Teikyo University
キーワード :
【目的】
現在,微小気泡を低浸襲治療に応用する試みが盛んに行われており,HIFU治療の温度上昇速度の向上や,Sonoporationによる薬物導入効率の上昇が認められているが,体内における微小気泡の挙動は血流と共に拡散するため,疾患部位に到達する濃度は低いという問題がある.我々はこれまで,微小気泡の濃度を局所的に高めるため,診断用の微小気泡の流れの中に超音波を照射することによる捕捉実験[1-3]を行ってきた.しかしこの現象には多くのパラメータが複雑に絡み合うためその解析は不十分であり,また薬物治療を目的として開発された微小気泡での検証は行われていなかった.よって本研究では治療用の微小気泡を用いて,生体内における捕捉のための条件を導出することを目的とする.
【方法】
本研究では微小気泡として脂質二重膜から成るバブルリポソーム(以下BLs)を用いた.ポリエチレングリコールモノメタクリレートを原料として作製した人工血管流路(内径2mm)を水槽中に沈め,水槽底部よりマイクロスコープにて観察する実験系を構築した.生理食塩水によって希釈したBLs懸濁液を流路に流し,流れの向きに対向する方向から超音波を照射し,流路壁面でBLsが捕捉される様子を光学的に観測した.BLsの捕捉量を定量的に評価するため,壁面に付着したBLsが占める面積を画像処理の手法により評価した.
【結果】
流速30 mm/s,濃度0.1 mg lipid/mLの濃度の懸濁液に対し,中心周波数1 MHz,の超音波を流路に対する照射角度60 degで60 s照射した.最大音圧の変化に対する捕捉の様子をFig.1に示す.音波がなければBLsは壁面に捕捉されない.照射音波の最大音圧値が上昇するに連れて,捕捉位置が上流に変移することを確認した.これからBLsの捕捉に作用する音圧のしきい値が存在することが示された.また捕捉面積は音波の照射パワーに対して比例する一方,60 mW以上になると減少に転じたことからBLsの破壊が起こっていると考えられ,気泡の捕捉を行うためには流速や濃度に対して最適なパワーが存在することが示された.
【参考文献】
[1]K.Masuda, et al. Jap. J. Applied Physics, Vol.50,07HF11,2011
[2]保坂ほか.生体医工学,Vol.52,No.1,pp.25-32,2014
[3]澤口ほか.生体医工学,Vol.53,in press