英文誌(2004-)
特別プログラム 運動器
パネルディスカッション 運動器 関節リウマチの日常検査法を考える
(S401)
関節超音波の有用性と今後の課題
Usefulness and Future Challenges of Joint Sonography
田口 博章
Hiroaki TAGUCHI
川崎市立川崎病院リウマチ膠原病・痛風センター
Division of Rheumatology, Department of Medicine, Kawasaki Municipal Kawasaki Hospital
キーワード :
関節リウマチ(RA)は,持続性の滑膜炎によって関節破壊をきたす自己免疫疾患である.その治療戦略には,TNF阻害療法を中心とする生物学的製剤の出現によりパラダイムシフトがもたらされ,臨床的寛解が治療の目標となった.早期診断,適切な治療強化に加えて,客観的指標を用いた厳密な管理が重要である.近年,関節超音波パワードプラ検査(PDUS)がRAの滑膜炎の評価法として注目されているが,臨床的疾患活動性との関連については確立されていない.RAの臨床的疾患活動性の評価におけるPDUSの有用性を明らかにすることを目的とし,当院では多くの検討を行い,アメリカリウマチ学会で報告した.対象はRA患者72例で,平均年齢は62.5歳,男女比28:44,平均罹患期間5.6年であった.全患者の両手指PIP・IP,MCP関節と両手関節の22関節をPDUSで4段階(0-3)評価し,その合計を「PD22スコア」とした.同時に臨床的疾患活動性をSDAI,CDAI,DAS28CRP,Boolean法で評価した.総PDスコアと各評価値およびこれらの構成要素である圧痛関節数(TJ),腫脹関節数(SJ),血清CRP値(CRP),患者による全般評価(PGA),医師による全般評価(EGA)との相関を分析した.PD22スコアはSDAI,CDAI,DAS28CRPのいずれとも有意に相関したが,その中ではSDAIと最も強く相関した(r=0.77,p<0.01).各構成要素との相関では,TJとCRPよりもSJとPGA,EGAと強く相関した.Boolean法の寛解基準を満たした14例中6例(43%)でPD22スコアが1点以上であった.RA患者におけるPDUSによる手・手指22関節の評価法は従来の評価法とよく相関し,RAの臨床的疾患活動性の評価に有用と考えられた.さらにBoolean法の寛解基準を満たした症例の半数近くで滑膜炎を検出し得たことは,PDUSの感度が高いことを示し,RAの「真」の臨床的寛解を評価する際に有用な手段になると考えられた.
次に,当院での検査体制について説明する.当院の病床数は713床で,人口150万人都市である神奈川県川崎市の市立病院である.関節超音波の検査数は,年間約350件(超音波室200件,外来病棟150件)で,医師・臨床検査技師(日本リウマチ学会登録ソノグファファー4人)にて施行している.検査の実施時には,超音波室(医師・臨床検査技師施行)は原則予約検査,外来病棟(医師施行)は随時検査である.超音波室では,痛みのあるなしに関わらず,全例の26関節(両PIP・IP,MCP関節,両手関節,両肘関節,両膝関節)と,その他の圧痛・腫脹関節を検査している.外来病棟では,触診上,滑膜炎の有無の判断に迷う関節を中心に検査している.一人当たりの平均検査時間は,超音波室では約30分間,外来病棟では数分間〜30分間である.超音波室では,GE LOGIQ 7を,外来病棟では,GE LOGIQ P5を使用している.関節超音波を施行する目的,検査を行う場所などによっても,観察部位,検査時間は異なるため,状況にあわせた検査体制が必要である.
今後,国内で,関節超音波を普及させるためには,医師と臨床検査技師との強い連携が重要である.パネルディスカッション「関節リウマチの日常検査法を考える」では,当院での検査体制,自研報告を提示しながら考察したい.