Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 運動器
シンポジウム 運動器2 運動器エコーの現状と将来を医師・臨床検査技師・理学療法士が熱く語る

(S399)

臨床検査技師は何ができるのか

A Spirit of Pioneer for Sonographer on MSK

松崎 正史

Masashi MATSUZAKI

ソニックジャパン株式会社

CEO, Sonic Japan Co., Ltd.

キーワード :

【はじめに】
医療施設で行われる検査とは何か.体の不調,痛みに対して視診,触診,聴診などヒトの五感を尽くし病態の真意を突き詰めるが,その診断を確かにするために五感を超えた情報を収集するための手法であり,はたまた陰に潜んでいる病への可能性を示唆する情報を収集するためのものである.言い換えれば六番目の“感”の位置づけのようであるが,それは単なる“感”ではなく正確無比なものでなければならない.そのため,職務を担う検査技師は常に精度を問われ再現性の高い情報を提供する職務に取り組んでいる.超音波検査も同じ位置づけにある.
【超音波検査の現状】
超音波検査は,非侵襲的であり前準備の必要性も限られている非常に簡便な検査である.超音波検査はその特性によりアプリケーションは多様化しニーズがたかまるにつれて,超音波検査を担ってきた先人はその手技の確立のために叡智を結集し研鑽を積み重ねることで欠くことのできない検査手法に押し上げた.一方,超音波の信号処理技術は急速な進化を遂げている.それは,今まで積み上げてきた診断基準を置き換えるくらいの大きな変革になるにもかかわらず柔軟に受け入れ対応してきた.つまり常に先進医療へ対応できるようにハード,ソフト両面に対して超音波検査も進化してきたのである.よって,超音波検査は医療ワークフローの中に溶け込み医療システムの成長と歩調を合わせるように成長してきたのである.
この成長の中に,置き忘れてしまったものはないだろうか.現在の医療システムは基本的に予約が前提として運用されている.もちろん予約により確保された時間を活用することで高精度な検査データを提供することは重要である.一方,超音波の最大のメリットはリアルタイムである.つまり時間,場所の制約なく瞬時にその場で情報提供できる唯一のモダリティなのである.その情報をもとに最善の治療戦略を策定し即時実行することが超音波の醍醐味の一つである.それを最大限活用しているのが運動器である.患者ニーズは即時に体の痛みからの解放にある.そのため瞬時の判断を必要とする現場に超音波はツールとして活用されているのである.ある意味,医療システムとしての位置づけにある予約を前提とした超音波検査とは遠いところで行われている.しかしながら,その手技は着実に進化し続けているのである.
【運動器エコーにおける役割と位置づけ】
では,多くの歴史を積み重ねて誇り高い超音波検査技術を構築してきた検査技師はこの運動器エコーに対してどのように向きあうべきであるのか.その答えは日本臨床衛生検査技師会からキーワードが発信されている.「臨床検査技師の未来構想」という答申書が平成26年3月28日に検討委員会から現在の社会情勢や医療環境,医療行政の基本施策,ならびに今後予想される状況を鑑みて未来における臨床検査技師像について提言されている.基本理念の最初に「技術者から医療人へ」とある.臨床検査データを出すだけではなく,チーム医療を推進する一員として被検者のQOLを考え,そして医師の診断・治療をサポートできる医療人へ,とある.まさに,積み上げた超音波検査技術を現在の医療システムにおけるワークフローから脱却し運動器の分野で自らがチームとしての一員としてなるべき姿を模索し確立する時代に来たのではないかと考える.先人たちが行ってきた常に変化する状況で叡智を結集し研鑽を積み重ねてきたスピリッツは受け継がれ,この新しい運動器エコーを構築できる力は兼ね備えているものと信じている.