Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 運動器
シンポジウム 運動器2 運動器エコーの現状と将来を医師・臨床検査技師・理学療法士が熱く語る

(S398)

小規模離島における処置系外来における超音波診断装置の果たす役割

Ultrasonic diagnosis system can help general physicians at amburatory surgery in small-scale isolated island

白石 吉彦

Yoshihiko SHIRAISHI

隠岐広域連合立隠岐島前病院内科・外科

Internal Medicine・Ambulatorysurgery, Okidozen Hospital

キーワード :

隠岐広域連合立隠岐島前病院は本土からフェリーで約3時間の位置にある.隠岐諸島島前(どうぜん)地区の唯一の病院としてこの地域の約6,000人の医療を担っている.非常勤医師として週に1回から月に1回の頻度で眼科,精神科,整形外科,産婦人科,耳鼻科の診療はあるものの,常勤は内科系総合医6名のみである.16列のCTはあるが,MRIはなく,開腹手術,分娩などは行っていない.離島であるためにあらゆる疾患の初期治療が求められる.内科兼小児科外来が2診体制,外科外来という名前の処置系外来が1診体制で行われている.この外科外来も内科系総合医によって行われている.外科外来へ来院する疾病区分としては50%が整形外科,皮膚科・形成外科が30%,外科が5%,以下耳鼻科,眼科疾患とつづく.
容易に整形外科に受診できない環境で非整形外科医が運動器疾患を診ざる得ない状況である.診療の質をすこしでもあげるために外科外来診察室に超音波診断装置を設置している.実際外科外来を受診する約30%の患者に超音波診断装置を利用し,診断,処置を行っている.
腰痛症,頸肩腕症候群の生食筋膜リリース,肩関節周囲炎の滑液胞注射やサイレントマニュピレーション処置,ガングリオン,肋骨骨折,手根管症候群,ばね指などありとあらゆる運動器疾患に及ぶ.ペインクリニックとしての神経ブロック,感染性粉瘤や皮下腫瘤の摘出時の局所麻酔も超音波下で行っている.
少なくとも医師の数としての偏在,科の偏在が解消されない限りは,現在のへき地離島での専門医療へのアクセスは改善されない.さらに外科系医師の配置は手術件数を勘案する必要があり,今後もへき地離島の小さな医療機関に常勤医として派遣される可能性は非常に少ない.こうした地域では内科系総合医が質の高い処置系外来を行うことが必要とされており,安全でかつ適切な医療の提供のために超音波診断装置は必須の医療機器である.この場合,超音波診断装置は検査の機器ではなく,診療の道具であるため,診察室の外来診療机と診察台のすぐそばに,常に電源を入れた状態で設置することが不可欠である.