Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 運動器
シンポジウム 運動器2 運動器エコーの現状と将来を医師・臨床検査技師・理学療法士が熱く語る

(S397)

整形外科診療におけるエコーの位置づけ

Applications of Ultrasound in Orthopedic Medicine: Diagnosis and Intervention

皆川 洋至

Hiroshi MINAGAWA

医療法人城東整形外科

Director, Joto Orthopedic Clinic

キーワード :

X線画像は整形外科の基本である.世界中どこにでもあり,誰もが簡単に検査を受けられるからである.X線画像の歴史は100年を超え,先人たちが歩んだ失敗や成功の積み重ねが今日の整形外科学の基礎を築き上げてきた.長く診断学の主役だったため,必然的に整形外科では骨が最も重要な構造物となり,整形外科学は骨を中心に病態,治療を考える学問として育ってきた.1970年代に登場したCT,MRIは,X線画像の弱点である骨の内部病変,軟部組織の描出を可能にした.X線画像で見えなかったものがとらえられるようになったことが,脊椎インストゥルメント手術や関節鏡視下手術を可能にした.整形外科学の進歩は,まさに画像診断技術の進歩と足並みをそろえてきたのである.最近急速に普及し始めた超音波画像は,従来の画像が果たしてきた「診断の道具」ではなく,診断から治療までを瞬時に完結させる「診療の道具」としての役割を担っている.これは他科とも全く異なる整形外科独自の使い方である.超音波診療が従来の診療スタイルより優れる点は,1)X線画像より素早く身体の内部情報が得られる,2)CT・MRIより空間分解能・時間分解能が優れる,3)装置そのものを簡単に持ち運びできる,4)モニタへの目線が一致するため患者との強力なコミュニケーションツールになる,5)診療時間が大幅に短縮する,6)医療費削減に貢献することがあげられる.超音波診療の普及は,診療される患者ばかりでなく,診療する医師に対しても大きな恩恵をもたらす.なぜなら,超音波装置を使いこなすために必要なのは,解剖学と整形外科学の知識そのものだからである.運動器エコーの普及・啓蒙は,整形外科診療のレベルを引き上げる.超音波診療は診断から治療まで全てを扱う日本の診療スタイルにマッチしており,専門分野の手術に特化し,画像診断,保存治療を他科に委ねる欧米の整形外科には真似できない.欧米発の技術であるX線・CT・MRIが整形外科学の進歩に大きく寄与したように,これからは日本発の技術である超音波画像が整形外科学を飛躍的に進歩させる原動力になると考える.