Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 運動器
シンポジウム 運動器2 運動器エコーの現状と将来を医師・臨床検査技師・理学療法士が熱く語る

(S397)

スポーツ外傷・障害に対する運動器エコー

Musculoskeletal Ultrasound for Sports Injuries

奥脇 透

Toru OKUWAKI

国立スポーツ科学センターメディカルセンター

Medical Center, Japan Institute of Sports Sciences

キーワード :

近年,画像診断法の発達は目覚ましいものがあり,X線(CR),CTはもちろん,超音波検査やMRIなど日々進化し続けている.これらの画像診断の中で超音波検査は,対象部位をリアルタイムに可視化することができるという特徴をもつ.X線検査に「透視」という言葉があるが,まさに超音波検査は運動器を透かして視ることができ,運動器エコーはスポーツ診療の現場になくてはならない存在となってきている.国立スポーツ科学センターのメディカルセンターでも,内科だけでなく整形外科診察室に超音波診断装置を常備し,また国際競技大会に帯同する際には,ポータブル装置を携帯して活用している.運動器エコーは問診・視診・触診と同時に行うことができ,診断だけでなく,貯留液の穿刺や薬剤の注入といった治療まで利用できるツールである.
演者は,これまでスポーツ整形外科診療を通じて,1990年に「アキレス腱断裂の治療における超音波検査の利用法について」(第3回日本整形外科超音波研究会)を発表し,その後も「肉離れにおける超音波検査およびMRIの有用性について」(1996年第22回日本整形外科スポーツ医学会),「いわゆるテニスレッグの超音波所見について」(1997年第9回日本整形外科超音波研究会),それに「成長期のサッカー選手における脛骨粗面部の超音波所見について」(2000年第12回日本整形外科超音波研究会)と臨床研究を重ねてきた.それ以降も運動器エコーをさまざまなスポーツ外傷・障害に対して活用してきている.その主なものは図に示すように,各部位の靭帯損傷(肘,手指,膝,足関節)や筋損傷(大胸筋,腹直筋,内転筋,大腿四頭筋,ハムストリングス,下腿三等筋),靭帯炎・腱鞘炎・腱症(肘,手関節,指,膝,アキレス腱,足部)など多岐にわたっている.これらのスポーツ外傷・障害では,画像診断としての活用の他に,ガングリオンの穿刺やヒアルロン酸の注入といった治療の際のガイドとして運動器エコーを利用している.さらに最近では,筋の粘弾性を評価するエラストグラフィーなども登場してきており,運動器エコーは筋のコンディションを評価できる可能性があり,筋損傷の予防への応用も期待されている.
本シンポジウムではスポーツ外傷・障害に対する運動器エコーの現状と将来について,演者の思いを表したい.