英文誌(2004-)
特別プログラム 運動器
シンポジウム 運動器1 運動器エコーに必要な超音波技術の現在そして将来
(S394)
血流評価を臨床に生かす
Exploiting assessment of the blood flow in the musculoskeletal ultrasonography
渡邉 恒夫
Tsuneo WATANABE
岐阜大学医学部附属病院検査部
Division of Clinical Laboratory, Gifu University Hospital
キーワード :
近年,運動器領域の画像診断に超音波検査(Ultrasonography:US)が用いられるようになり,MRIと同等もしくはそれ以上の高分解能の画像で軟部組織を観察できることから確立された診断法となりつつある.特に,動的評価や血流評価が簡単に出来ることはUSの最大のアドバンテージであると考える.運動器領域における血流評価に関しては,リウマチ診療における滑膜炎評価がその代表的な検査である.リウマチ性滑膜炎におけるpower Doppler法の有用性はもはや周知の事実であり,その評価方法にはgradingによる定性評価がroutine業務として行われている.関節リウマチにおける関節エコーは,現在では疾患活動性の評価に加え,治療効果の判定や,臨床寛解基準を補完する評価法として期待されている.また,近年では造影剤を使用しない状態でも微細で非常に低流速の血流を捉えることが出来る新しいイメージング技術が開発され,関節リウマチの関節エコーやその他の運動器・関節エコーへの臨床応用が期待されている.
このようにこれまでの運動器・関節エコーにおける血流評価といえば血流が有るのか無いのか,といった定性評価が主流であった.リウマチ診療においては,power Doppler法による滑膜炎の血流シグナルのpixel数をカウントすることによって定量評価が可能であり,その有用性が報告されている.しかしながら,pulse Doppler法による流速計測となると,心・血管領域では至極当然にroutineとして行っているが,運動器・関節領域においては極めて少ないのではないだろうか?関節リウマチ診療においては,一部の研究者達がpulse Doppler法によって滑膜血流の血流速を計測し,リウマチ性滑膜炎評価に関する有用性を報告しているが,未だ一般的であるとは言い難い.一方で,腹部領域においても病変部に対するspecificな血管の血流計測が検討されており,胆嚢癌や急性胆嚢炎における胆嚢動脈の血流上昇が報告されている.演者らは,運動器・関節領域においても,ターゲットに対するspecificな血管の血流評価を行うことによって,痛みの分類や治療方針決定の際の指標に用いる事が出来ないかと考えこれまで検討を行ってきた.肩関節外来において,肩関節痛を主訴とする患者について検討を行っており,特に,肩関節包の栄養血管の一つである前上腕回旋動脈に着目し,pulse Dopplerによる血流速の計測を行い若干の知見を得ている.本シンポジウムでは実際に演者の行っているroutine検査を紹介し自検データを交えながら,運動器エコーの未来,そして血流評価の有効性について議論したいと考える.