英文誌(2004-)
特別プログラム 血管
ワークショップ 血管2 臨床の現場から見た血管エコーガイドラインの役割と課題
(S389)
大動脈・下肢動脈領域
A role and the problem of the vascular echo guidelines that I saw from the clinical spot: Aorta, lower limbs artery
佐藤 洋1, 石井 克尚2
Hiroshi SATO1, Katsuhisa ISHII2
1関西電力病院臨床検査部, 2関西電力病院循環器内科
1Central Clinical Laboratory, Kansai Electric Power Hospital, 2Cardiovascular Medicine, Kansai Electric Power Hospital
キーワード :
【序論】
日本超音波医学会では,血管エコー検査の種々の標準的評価法[下肢深部静脈血栓症(2008年),頸動脈(2009年)]を発表してきた.そして2014年に“超音波による大動脈・末梢動脈病変の標準的評価法(Jpn J Med Ultrasonics Vol.41 No.3 405-414.2014)”が発表された.その背景には人口高齢化,食生活の欧米化により増加傾向にある動脈硬化性疾患を超音波検査にて評価するかという目的がある.このような標準的検査法が普及し,何処の医療機関でも同じ評価法,同じ用語を用いることにより大動脈・末梢動脈病変診療の普及や質の向上に寄与できるものと考える.
【日本超音波医学会ガイドラインの立ち位置】
“超音波による大動脈・末梢動脈病変の標準的評価法”は,あくまでも超音波検査の標準的評価法であって,診療ガイドラインではないので,日本や欧米の診療ガイドラインの疾患分類や重症度評価,合併症,診断(超音波検査と他の画像診断の特徴や診断アルゴリズムなど),鑑別診断法,治療法などを知っておく必要がある.
【略語について】
本文中では血管名称(CFAやSFAなど)や病名(TAA,AAA)など略語を多用しているが,記載の初めに必ず“日本語表記(英語表記:略語)”としている.実際に報告書を書く場合には,略語を多用せず,循環器以外の診療科や多くの医療職種が読むことを前提として書きたい.
【課題】
“超音波による大動脈・末梢動脈病変の標準的評価法”改めて読み返してみると,検査をすでに実施している者が読んでわかる内容であって,初心者が見て,このガイドラインを見て検査ができる検査技術書的な内容ではないことがわかる.また記述はあるが,実際の評価法や計測法が提示されていないものとして以下のようなものが挙げられる.①下肢動脈の狭窄評価の指標であるPSVR(peak systolic velocity),抵抗係数,拍動係数の計測方法,②国際的な末梢動脈疾患のガイドラインであるInter-Society Consensus for the Management of Peripheral Arterial Disease(TASCⅡ)で記載されている重症度分類,③膝窩動脈外膜嚢腫,膝窩動脈捕捉症候群などの動脈硬化性疾患以外の病態についての記述,④大動脈・下肢動脈ともに標準的な報告書様式
【まとめ】
日本超音波医学会編“超音波による大動脈・末梢動脈病変の標準的評価法”を中心に述べた.今後,疾患の病型分類や重症度評価など診療ガイドラインが変化していくとともに,超音波検査の評価方法も変化してくることが予想される.常に時代にあった超音波検査ガイドラインに改訂していく必要がある.