Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 血管
ワークショップ 血管1 周術期における血管エコーの役割を検証する

(S385)

周術期における下肢静脈エコーの役割

Role of leg venous ultrasonography in perioperative period

山田 典一

Norikazu YAMADA

三重大学循環器腎臓内科学

Department of Cardiology and Nephrology, Mie University Graduate School of Medicine

キーワード :

周術期に最も問題になる下肢静脈疾患は,致死的合併症の急性肺血栓塞栓症を引き起こす下肢深部静脈血栓症(DVT)である.周術期における下肢静脈エコーの果たす役割は実に大きく,静脈血栓塞栓症の発症リスクの高い患者に対してエコーを用いたスクリーニング検査を行うことで,症状の有無を問わずDVTを的確に診断し,早期に対処することができ,ひいては周術期の急性肺血栓塞栓症の発症を未然に食い止めることが可能となる.
実際に三重大学附属病院でも2003年から,入院患者に対して静脈血栓塞栓症リスク評価を行ったうえで,リスクが高いと判断されDダイマー測定で高値を示す患者に対して,下肢静脈エコーを行い,多数のDVTが発見されている.こうしたエコーによるスクリーニング検査を用いた予防対策を講じる前には,有症候性肺血栓塞栓症の院内発症が年間10.5例発生していたが,対策開始後年間1.3例へと激減し大いに効果を上げている.欧米のガイドラインでは,費用対効果の観点から,周術期の下肢静脈エコーを用いたスクリーニングは推奨されておらず,むしろリスクに応じた薬物予防法を中心とした一次予防の徹底が重要とされる.しかし,薬物予防法が十分に普及していない本邦の現状を考慮すれば,非常に有用な周術期肺血栓塞栓症抑止効果に結び付く方法であると考えられる.