Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション 血管2 ここまで観る!血管エコーの極意

(S381)

大動脈・下肢動脈エコーの極意

Aorta and lower limbs artery sonography

寺澤 史明, 遠藤 淳子

Fumiaki TERASAWA, Junko ENDO

社会医療法人製鉄記念室蘭病院臨床検査科

Clinical Laboratory, Steel Memorial Muroran Hostital

キーワード :

【はじめに】
下肢動脈超音波検査は,ABI検査において低値となった場合や,検査結果と症状に乖離を認めた場合などにスクリーニング的に実施している施設が多い.その際,鼡径部,膝窩部,足関節部での血流波形から病変を推測し,そこから狭窄部位や病変診断へと進む手技が一般的である.しかし,時に,その判断に苦慮することがある.その原因としては,側副血行路の存在や形成異常による機能的狭窄などがあるが,特に,膝窩動脈以下では低形成等種々のバリエーションが存在するため,検査する上では注意を要する.また,治療目的においても検査依頼される場合があるが,そのような検査では,病変部位の同定に加え,血管内治療での穿刺部やgraft吻合部の情報を得るためにも血管超音波が利用されている.
【側副血行路】
慢性閉塞などでは,末梢への血流を確保するために側副血行路の発達を認めることが多く,その走行には一定の分枝を介することが知られている.腹部大動脈に閉塞をきたすLeriche症候群や腸骨動脈閉塞などでは,肋間動脈や肋下動脈,腰動脈などから深腸骨回旋動脈を介し外腸骨動脈へ開口する.また,浅大腿動脈閉塞では,大腿部の筋枝や上膝動脈などを介して大腿深動脈や浅大腿動脈中枢側から浅大腿動脈遠位側や膝窩動脈へと開口する.このような閉塞性病変の場合は,治療を考慮し,TASC分類を念頭にいれた評価が大切となる.
【下肢動脈の形成異常】
胎児期にける血管の派生が主な原因となっている.膝窩動脈では,膝窩動脈捕捉症候群の原因となり,下腿3分枝では,血管の閉塞と診断することもあるため注意が必要である.腓骨動脈から分岐する穿通枝や交通枝は側副血行路にもなりうるが,低形成の場合では迂回路となり,足背動脈(前脛骨動脈)や足底動脈(後脛骨動脈)へと血液が供給される.一般的に,血管径が流入先血管と同程度で,血流に高度な蛇行を認めない場合は,前脛骨動脈や後脛骨動脈の低形成が強く疑われる.膝窩動脈捕捉症候群では,膝窩動脈は通常位よりも内側を走行する場合が多いが,病変部を直接描出できなくとも,足部を背屈(底屈)することによる足関節部での血流変化から病態を推測することが可能である.
【治療前検査】
閉塞(狭窄)部位が外腸骨動脈から総大腿動脈,もしくは浅大腿動脈から膝窩動脈へと連続していないかを評価することは,血管内治療か手術療法かの治療方針にも影響を与える場合がある.手術療法が選択された場合では,吻合部位(特に末梢側)の決定にも利用される.下腿3分枝や足底動脈などから,血管内腔が保たれており,石灰化などの動脈硬化病変の少ない部位を限局的に選択するには,超音波検査が適している.
【おわりに】
検査を施行するにあたり,一般的な解剖を正確に理解することは大切である.加えて,側副血行路や形成異常を理解したうえで検査を進めることにより,病態をより的確に把握し,治療へと役立てることが可能となると考える.