Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション 血管2 ここまで観る!血管エコーの極意

(S380)

頭蓋内超音波検査

Transcranial Doppler Ultrasonography

鮎川 宏之

Hiroyuki AYUKAWA

医療法人医仁会武田総合病院検査科

Department of Clinical Laboratory, Takeda General Hospital, Kyoto, Japan

キーワード :

【はじめに】
頭蓋内超音波検査には2種類の方法がある.1つは,TCD(Transcranial Doppler)といい,断層像をもとに血流波形を得るのではなく,頭蓋内動脈をブラインドで探り,パルスドプラ法のサンプルボリュ-ムの深さを調整しながら血流波形およびHITS(high intensity transient signals)を得る方法である.もう一つはTCCFI(Transcranial color flow image)と言われるもので,心エコーや腹部エコー検査で普段用いている超音波断層装置にて,主として低周波のセクタプローブを用いてカラードプラガイド下に頭蓋内動脈を描出し,パルスドプラ法にて血流波形を測定する方法である.本セッションでは,TCCFI検査法の検査手技,この検査でわかること,臨床応用などについて極意を解説する.
【TCCFIの検査手技:知っておくべきこと】
頭蓋内を超音波で検査するにあたり知っておかなければならないことを列挙する.一つ目は超音波で観察できる頭頸部血管の解剖を知ることである.二つ目は,最低限調節しておくべき装置条件設定と,頭蓋内に通過できる適切なアプローチ骨窓(bone window),大人の場合は3つの骨窓(側頭骨窓,大後頭孔,眼窩窓)があることを知っておく必要がある.三つ目は,検査の有用性と限界を知ることである.例えば側頭窓からのアプローチでは,骨の影響により信号を得ることが出来ない症例も存在する.男性は年齢に関係なく約70%以上の描出率が期待できるが,女性は圧倒的に描出率が低く,男性と比べると全ての血管において約30%は悪いという限界も知っておくべきである.
【TCCFIでできること!】
TCCFI検査法においてできることは以下の3つである.①頭蓋内動脈をカラードプラにて描出できる.②描出した頭蓋内動脈の走行をある程度追うことができる.③パルスドプラ法にて頭蓋内主幹動脈の血流速度を計測することができる.この3つのことをただ行うだけでは殆ど意味のない検査になりかねない.描出された血流(カラードプラ)画像をよく観察し,そして血流速度を計測しながら循環動態をどう考えるかがこの検査法における極意の一つとなる.
【臨床的応用について】
TCCFI検査法における臨床応用として有用性の高いものとしては,①脳梗塞の原因精査で,内頸動脈系や椎骨脳底動脈系の頭蓋内病変が疑われる時や,頭蓋外の頸動脈病変が明らかで,その末梢血流(頭蓋内)が,どの様な状態であるかを検索する時に有用となる.②頸動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術の術後合併症である過灌流症候群のモニタリングとして有用である.当院においては脳血管内治療前後に頸動脈エコーとTCCFIをセットで検査を行っている.③脳動脈瘤破裂(主にくも膜下出血)後の脳血管攣縮の早期発見のためにTCDやTCCFIは古くから行われているが,いまだに血管攣縮の完全な予知予防の手段は存在せず,TCD・TCCFIにおける精査はあまり行われていないことが多い.現在装置が格段に進歩しており,今まで以上に応用されるべきである.④その他TCCFIが有用となる疾患として,比較的頻度は少ないが,脳動静脈奇形(AVM),モヤモヤ病,なども偶発的に発見されることがある.また,脳機能モニタリングとして,定性的ではあるが脳死判定などにも利用されている.①と②においてはTCCFI単独で行うことは少なく,頸部血管エコー検査と併用して行うことが多い.当院においても併用が多く,臨床応用として用いている.最後に実際の症例を提示し,『TCCFIでここまでみる!』を解説する.