Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション 血管2 ここまで観る!血管エコーの極意

(S380)

頸動脈エコー領域

Carotid artery sonography

尾崎 俊也

Toshiya OZAKI

医療法人財団医親会OBPクリニック医療部臨床検査科

Clinical Laboratory, OBP Clinic

キーワード :

【はじめに】
私が携わる事になった30年前は,国内では限られた施設でのみ実施されていた頸動脈超音波検査であるが,今では,脳血管障害をはじめとする動脈硬化症や,生活習慣病の診療においては必要不可欠な検査として位置づけされ,診療所から健診施設においても広く普及するに至った.これらの要因としては,加速度的に高齢化社会を迎えた事や,超音波装置が飛躍的に進歩したことが挙げられる.しかし,同時に多くの問題を抱えていることも事実である.問題点としては,統一された検査法や評価法などのガイドラインの整備が遅れてしまった事,また,十分な教育を受けずに,他領域のSonographerが頸動脈超音波検査を実施せざるを得なかった事などが挙げられる.
ところで今回,「ここまで観る!血管エコーの極意」という指定演題を頂いたが,私の長年の経験で頸動脈超音波検査に“極意”や“コツ”など無い!と言い切れる.ただ,他の領域の超音波検査と異なる点として,経過観察が重視されるため,“計測の精度と正確度”が要求されることが,問題点を浮き彫りにしているのではないだろうか.この計測の精度と正確度を保持するには,「超音波の原理・特性を熟知すること」,「超音波装置の性能を最大に引き出すこと」,「病変検索・画像記録・計測評価・結果報告書を統一すること」などが重要と考える.そこで今回は,以下に列挙した病変部の検索からレポートの作成まで,“計測の精度と正確度を維持するための私の検査手技”を“極意”と置き換えて紹介する.
【病変部の検索・観察】
①総頸動脈起始部の観察は胸骨上窩の正中アプローチを用いる.
②血管側壁の観察は血管長軸アプローチを重視する.
③頸動脈洞から内頸動脈起始部の短軸断面は末梢からスキャンする.
④プラーク表面の形態はドプラ血流シグナルで観察する.
⑤内部低輝度プラークは可動性の有無に注意する.
⑥潰瘍型プラークは潰瘍底を詳細に観察する.
【ドプラ血流記録】
①血流波形の記録はドプラ入射角補正を一定にて記録する.
②血流波形の記録部位は一定の領域に統一する.
③カラードプラシグナルの傾斜走査は最大感度の条件で観察する.
④椎骨動脈血流は頸部を回転せずに記録する.
⑤装置の自動計測機能を信用しない.
⑥狭窄病変は狭窄部末梢側の血流記録を必須とする.
【記録画像と計測】
①病変の進行度により計測項目を設定する.
②max-IMTの計測は各領域の近位壁および遠位壁の両側で行う.
③直交2断面での計測を基本とする.
④大きなプラークは血管長軸進展範囲と短軸の占有率を計測する.
⑤狭窄率の計測は計測困難例を除き面積狭窄率を求める.
⑥面積狭窄率の計測は可能な範囲で楕円近似法を用いる.
【レポート(シェーマ)の作成】
①シェーマの下絵は血管走行に応じて使い分ける.
②IMTの計測部位は明確に記載する.
③プラークや狭窄病変は長軸,短軸の両断面で記載する.
④計測値は前回比較だけでなく,時系列でデータを解析評価する.
・・・etc.