Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管 Vascular accessの管理と治療にエコーを活かす

(S373)

バスキュラーアクセス作製における術前評価

Importance of functional assessment before vascular access creation

小林 大樹1, 末光 浩太郎2

Hiroki KOBAYASHI1, Kotaro SUEMITSU2

1独立行政法人労働者健康福祉機構関西労災病院中央検査部, 2独立行政法人労働者健康福祉機構関西労災病院腎臓内科

1Central Clinical Laboratory, Kansai Rosai Hospital, 2Nephrology, Kansai Rosai Hospital

キーワード :

良好なバスキュラーアクセス(VA)は,患者が良質な透析を施行するうえで必要不可欠なツールとなる.特に透析導入前に作製するVAの種類や吻合部位を選択するためには,作製前の正確な診断が必要となるが,造影剤使用により腎機能悪化の可能性があるため造影検査が施行できず,その評価を超音波検査に委ねることが多い.今回はVA作製における術前の超音波検査による評価法について述べる.
当院では,VA作製術前の血管評価を全例に行っている.まずは,自己血管内シャント(AVF)が作製できるかどうかの情報を収集する.上腕動脈における血流速波形を記録し狭窄後波形でないことを確認する.次に上腕動脈と橈骨動脈を長軸と短軸またカラードプラも併用して走査し,血管径や狭窄,閉塞の有無,壁の性状,血管の連続性を観察する.静脈においても手関節部の橈側皮静脈から中枢側へ走査し,肘部の橈側皮静脈および肘正中皮静脈,交通枝や上腕部の橈側皮静脈および尺側皮静脈における血管径や狭窄,閉塞の有無,血管の連続性を観察する.つまり,AVFをどこで作製できるかの判断材料を提供するよう努めている.また,AVFでは作製後の穿刺についても考慮する.2カ所の穿刺部位を確保できるであろう部位の血管径や深さも評価するが,エコー画像に頼らず上腕部を適度に駆血して,穿刺できる血管を確認する.
しかしながら,血管径が小さい,血管走行が深く穿刺が困難などの理由から,AVFが作製できない症例に対しては,人工血管内シャント(AVG)や尺側皮静脈転位内シャント(BVT),動脈表在化も視野に入れて検査を進める.AVGにおいては,動脈側吻合部となる上腕動脈あるいは橈骨動脈起始部を観察し血管径や動脈壁の性状を評価する.一方,静脈側吻合部となる上腕部の尺側皮静脈や上腕静脈の血管径,中枢側への連続性も確認する.心機能が不良の場合は,動脈表在化が選択されるが,表在化する上腕動脈の血管径や血管壁の性状を評価,また穿刺できる返血静脈も検索する必要がある.さらに,上記のVAが作製できない場合は,長期留置カテーテルになるため,内頸静脈から腕頭静脈,または大腿静脈から腸骨静脈までを観察することもある.
このように作製するVAによって観察,評価する部位が異なるため,VAの種類やその特徴,術式,ある程度の患者背景を知っておくと効率良く検査を進めることができる.VA作製における超音波を用いた術前評価の最大の目的は,患者にとって作製しうる最適のVAを,失敗なく初回の手術で成功させることにある,と考えている.