野口 智永

Tomonaga NOGUCHI

横浜第一病院バスキュラーアクセスセンター

Vascular Access Center, Yokohama Daiichi Hospital

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血液透析患者にとってvascular access（以下VA）は必要不可欠なものである．VAの中で内シャントは生体内に異常な血行動態を作り出しているが，この異常な血行動態に十分な血流が存在しないと「適切な透析量の確保」が困難になる．透析不足は合併症罹患率および死亡率を増加させると報告されており，日々のVA管理を怠りVAが十分に機能しない状態では患者に悪影響があることは容易に理解できる．またVA閉塞を起こすとその日の血液透析の妨げになるだけではなく，治療による患者侵襲や治療に伴う医療費の増大などの不利益も生じるので，VA管理は「閉塞を防止する」という目的も持っている．
VA管理の基本は視診・触診・聴診を主体とした理学的所見の把握である．また血液透析の際にはピロー圧や静脈圧がVA管理のモニタリングとして有用である．しかしこのような理学的所見は主観的なものであり，客観的所見として機器によるモニタリングも必要と思われる．超音波検査は客観的にVAの形態的かつ機能的評価が可能な機器である．
形態的評価において最も重要なものは狭窄の発見および評価である．本邦のVAガイドラインには「VA狭窄の正しい診断やその評価を行う必要がある．」と記載されているがVAはそもそも非生理的なものであり，何を標準として，どの程度の狭窄を問題とするかの判断は難しい．
また機能評価についてVAガイドラインではVA血流量の測定がサーベイランスとして推奨されている．VAは十分な血流量があれば透析量は確保されるし閉塞を起こしにくいので，VA血流量の測定が推奨されること当然のことであると言える．しかしここで問題になるのは十分な血流量はいくらかという点である．透析装置のポンプ血流量は患者や施設により異なるため，絶対値としてどのくらいの血流量がよいのか患者によって異なってくる．
前述したように形態的および機能的評価とも類似した問題を抱えているが，標準的なVA例えばradiocephalicAVFや前腕AVGは標準型を比較的設定しやすいと考えられる．
以上のような観点からVA管理の必要性と超音波検査の役割について言及する．