英文誌(2004-)
特別プログラム 泌尿器
パネルディスカッション 泌尿器 女性骨盤底機能の超音波診断
(S361)
経会陰超音波検査による女性の膀胱流出路の評価
Evaluation of the female bladder outlet by the trans-perineal ultrasonography
上島 千春, 中田 真木
Chiharu UESHIMA, Maki NAKATA
三井記念病院産婦人科
Division of Obstetrics and Gynecology, Mitsui Memorial Hospital
キーワード :
骨盤臓器脱(POP)や腹圧性尿失禁(SUI)の術前の診断・評価には膀胱流出路の観察が必要である.従来,流出路の評価にはチェーン尿道膀胱造影やQチップテストが行われてきた.しかしながら,患者への侵襲があることや被曝を伴うこと,検査室を移動しなければならないといったデメリットがある.そこで,当科では流出路を含む骨盤底の評価にまず経会陰超音波検査を行っている.特に我々産婦人科医にとってエコーは使い慣れたツールであり,外来でいつでもすぐに施行でき,患者にとってもほとんど無侵襲であるというメリットがある.
動的経会陰超音波検査は,砕石位で陰唇間にカバーをかけたコンベックスプローブをあて,患者に咳ばらいをさせたり怒嘖をかけさせたりして,膀胱頸部の変形,尿道の回転性下降やずれ動きなどを観察する.SUIの場合,咳ばらいや怒嘖を加えることで,膀胱頚部の漏斗状開大や尿道の長軸方向のずれ動きを認める.前腟弛緩を伴うPOPの場合は,咳ばらいや怒嘖を加えることで,尿道の回転性下降と膀胱底の大きなせり出しを認めることが多い.砕石位ではこれらの尿道や膀胱底の支持不全を確認できない場合でも,下部尿路症状のある症例では,体を起こしてしゃがみや中腰の姿勢をとらせると流出路の形態学的異常が明らかになることが多い.
経会陰超音波検査では子宮や直腸・ダグラス窩も流出路と同一の画面で観察できるので,これらの下垂の程度や,恥骨や子宮と流出路の位置関係なども同時に把握することができる.また,動画を記録しておけば結果を客観的にかつ繰り返し見ることができるという点でもすぐれている.
経会陰超音波検査は簡便で低侵襲,かつ応用範囲が広く,流出路の評価において真価を発揮する.実例を示し,代表的な所見を供覧する.