Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 泌尿器
シンポジウム 泌尿器 泌尿器科疾患の診療プロセスにおける超音波検査の役割(第40回日本超音波検査学会との共同企画)

(S358)

腎腫瘍と腎外傷の超音波検査の位置づけ

The role of ultrasonography in the cases of renal tumor and renal trauma

金田 智

Satoshi KANEDA

東京都済生会中央病院放射線科

Department of Radiology, Saiseikai Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査は健診から急性疾患まで広く用いられているが,腎腫瘍性病変や腎外傷の画像診断においては,CTなど他の画像検査とほぼその役割分担が確立されている.本セッションでは腎腫瘍と腎外傷における超音波検査の役割と検査のポイントについて解説する.
【腎腫瘍診療における超音波検査の役割】
血尿,腫瘤触知,痛みが腎細胞癌の3大兆候として知られているが,現在ではこのような症状が出現する前に健診の超音波検査や,他のスクリーニング検査として行われた超音波検査やCTで偶然発見されることがほとんどである.健診発見腎細胞癌は予後がよいことが知られており,腎癌診療ガイドラインでも超音波検査が推奨されている.腎細胞癌の見落しを防ぐためには,縦断走査だけでなく横断走査の追加が必要である.特に左腎では右下側臥位で最大割面を描出する後腋窩線付近からのスキャンだけでなく,前腋窩線付近からのスキャンを併用するとよい.また一方でdromedry humpやBertin’s columnなどの形状のバリエーションを腫瘍疑いとしてとりすぎる症例もまだまだ少なくない.これらについてはBモード像で十分観察すればまず鑑別可能であるが,カラードプラ法での観察も役にたつ.透析腎において腎細胞癌が発症しやすいことはよく知られている.透析腎では造影も可能であるが,腫瘍の造影効果は比較的乏しいことが多いため,スクリーニングでは超音波検査の方が有用なことが少なくない.
一方腎盂癌については肉眼的血尿を主訴とすることが多く,腎結石や膀胱腫瘍のスクリーニングを主目的とした超音波検査と腎盂尿管腫瘍や尿管結石のスクリーニング目的でCTUrographyが推奨される.顕微鏡的血尿の症例では通常超音波検査のみが選択されることが多いが,小さい腎盂癌は内部エコーのある傍腎盂嚢胞のように描出されることを知っておくと,超音波検査によるスクリーニングでも発見は不可能ではない.
その他,良性腫瘍としては,しばしば血管筋脂肪腫が発見される.典型的なものは高エコー腫瘤として描出される.
【腎外傷における超音波検査の役割】
交通事故や転落など高エネルギー外傷では,短時間で施行できるダイナミックCTによる全身評価を行う.腎破裂のような高度の腎損傷においてはまず活動性の出血の有無の評価が重要である.動脈相からCT Angiographyを作成することによって出血血管が同定できれば,それに基づいて経動脈的塞栓術をより容易に行うことができる.一方超音波検査が役に立つのは,腎生検後や腎結石破砕術後の出血など医原性の外傷が想定されている場合と,抗凝固療法中の患者が転んでその後いたみが続くような場合,すなわち血圧などの状態が安定している軽症の場合である.実際に多いのは腎被膜下血腫であり,この場合は腎実質を強く圧排するように境界鮮明な無エコー域が描出され,超音波検査のみで診断可能である.また自然止血されるので,超音波検査で経過観察すれば十分である.後腹膜脂肪織への出血は,後腹膜脂肪織が境界不鮮明な低エコー域として描出されることが多い.通常後腹膜腔への出血のため,自然止血されることが多いが,貧血が進行するような場合にはダイナミックCTを行うべきである.外傷によって生じる尿瘤腫についても超音波検査で評価可能であるが,造影CT遅延相で,造影剤が後腹膜腔に排出されることが確定的な診断根拠となる.多くは自然に治癒するが,長期にわたって改善しない場合には経膀胱経尿管的に腎盂膀胱カテーテルを挿入し,治療を行うことがある.