Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 泌尿器
シンポジウム 泌尿器 泌尿器科疾患の診療プロセスにおける超音波検査の役割(第40回日本超音波検査学会との共同企画)

(S356)

看護ケアの新たな展開〜超音波診断装置の活用〜

New developments of nursing care〜Use of the ultrasonograph〜

松尾 淳子

Junko MATSUO

大阪医科大学看護学部

Nursing, Osaka Medical College

キーワード :

高齢化社会の急速な到来に伴い,医療専門職の職能の拡大が重要視されている.なかでも看護師においては,2015年10月より「特定行為に係る看護師の研修制度」が施行されることになり,その役割に大きな期待がよせられている.このような医療ニーズの変化に伴い.看護師に求められるスキルも変化しており,より確実で適確なスキルが重要となっている.
臨床で行なっているフィジカルアセスメントは,身体内部の状況を外から確認し判断する技術であるが,身体内部の状況をより適切にアセスメントするためには,「可視化」することが必要であると考える.そこで超音波画像の客観的データを用いることで,迅速かつ確実で,患者や家族にとっても安心安楽なケアへとつながる.
看護ケアでエコーを用いたのは,褥瘡を観察することから始まった.皮膚表面ではさほどダメージがなくても皮下組織には損傷をうけているような場合など,肉眼では見えない部分をエコーで早期に発見し,治療およびケアを行なうことで,早期治癒に貢献している.看護ケアの様々な場面でエコーは活用が可能である.例えば,静脈穿刺や採血といった穿刺時に,目視できない血管をエコーで観察し,血管の太さや血管までの距離および穿刺角度を確認し穿刺することで,安全確実な穿刺につながる.現在,当大学では基礎看護技の静脈穿刺の授業にエコーを取り入れている.教科書から得た解剖の知識にプラスし,エコーにより動画で体内の情報を見ることにより,頭の中でより具体的な血管のイメージがインプットされ,採血時に確実に穿刺することにつながっている.静脈穿刺以外にも,様々な看護の場面でエコーを活用することができる.例えば,高齢者のケアでは,膀胱エコーで膀胱内の残尿量を確認し,排泄トレーニングを行うことや,便秘時には腹部エコーにて大腸を確認し,内服などの排泄を促す適切なケアに役立てることができる.また,昨今摂食・嚥下障害においては,嚥下状態をエコーで確認することで,誤嚥の予防などにも応用できることが期待されている.
エコーは操作が簡便であり患者への負担もないことからも,看護師が使用しやすい装置である.
現在,携帯型のエコーも普及し始め,訪問看護などの在宅の場面においても利便性が高まっており,今後は在宅で撮影した画像をかかりつけ医に送信し,指示を受け迅速に治療やケアが行なえることになっていくと考えられる.さらには,チーム医療という観点からも,超音波画像は重要な客観的データとなり,この情報を共有することでより個々に応じたケアや治療が可能となる.コミュニケーションツールとして超音波画像が用いられることにより,チーム医療が活性化し,看護の質が上がることも期待できる.看護ケアの際には,聴診器と血圧計に加え,エコーを持ち歩き,いつでもどこでも画像を用いて可視化するというスタイルが,これからのスタンダードになることが期待される.