Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 乳腺甲状腺
ワークショップ 乳腺甲状腺 FNAしなくてよい甲状腺結節とは?(JABTSとの共同企画)

(S352)

FNACしなくてよい甲状腺腫瘤とは?

Thyroid Tumors to be avoided from FNAC

田中 克浩, 緒方 良平, 齊藤 亙, 太田 裕介, 小池 良和, 下 登志朗, 紅林 淳一

Katsuhiro TANAKA, Ryouhei OGATA, Wataru SAITO, Yusuke OHTA, Yoshikazu KOIKE, Toshiro SHIMO, Junichi KUREBAYASHI

川崎医科大学乳腺甲状腺外科

Department of Breast and Thyroid Surgery, Kawasaki Medical School

キーワード :

日常診療で甲状腺腫瘤に対する穿刺吸引細胞診(FNAC)の有用性は一致するところである.しかし,どんな甲状腺腫瘤に対してもFNACを施行すべきとの考えがないのもまた一致するところである.FNACは簡便にしかも安全に施行できる手技であるが合併症として,出血,浮腫性腫脹などがあり,有用性が下回る症例では施行すべきではない.この発表ではFNACしなくてもいい甲状腺腫瘤を提案したい.
我々は米国甲状腺学会(ATA)のガイドラインと本邦の甲状腺超音波診断ガイドブックを参考にしている.充実性腫瘤では5mm以下では細胞診は施行していない.5-10mmでは悪性を疑う所見(微細石灰化,低エコー,血流亢進,被膜浸潤,DW比高値,周囲リンパ節腫大)があれば細胞診を施行している.本邦のガイドブックより厳しい10mm以上で原則細胞診をする方向にしているが,spongiform massやgiraff appearanceが明らかな腫瘤やhyperechoic腫瘤は20mm以上をFNAC対象にしている.嚢胞性病変では内部の充実部の評価が大変重要である.充実部へのFNAC適応は前述と同様であるが,20mm以上の嚢胞では原則細胞診を行うようにしている.しかし,等エコーや血流のほとんど見られない乳頭癌(図1)は決して珍しくなく,乳腺腫瘤のような決定樹は大変困難であることを忘れてはいけない.甲状腺癌は予後良好のものがほとんどであり,早期診断・治療の意味合いを見出すことが困難なこともあるが,経過観察するにしても,正確な診断に基づいたものであるべきと強く考えている.