福成 信博

Nobuhiro FUKUNARI

昭和大学横浜市北部病院外科

Department of Surgery, Showa University School of Medicine, Yokohama Northern Hospital

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表在臓器である甲状腺の結節を診断する上で，理学的所見として触診で得られる情報は未だ重要である．その一方で，個人の経験，感覚に起因しがちなこれらの情報を画像化できる組織弾性イメージングは，腫瘍の良性・悪性の鑑別診断に有用と期待されている．組織弾性イメージングは，手動でプローブを圧迫，解除して撮像をするReal-time Tissue Elastography（日立アロカメディカル）が最初に臨床応用されている．
最近では，組織ドプラ法を利用したストレインイメージ，大きな音響放射圧で組織に歪みを与えてその変化を見るARFI（Acoustic Radiation Force Impulse Imaging），せん断波の速度を用いて組織の歪みを見るSheare Wave Imagingなどが開発されている．このように組織弾性イメージングの呼称は一般名と登録商標および通称が混在しているのが現状である．乳頭癌においては，腫瘍組織自体は周囲の甲状腺組織よりも極めて硬く，組織弾性イメージとして，その差を表すことは容易である．たとえ橋本病や腺腫様甲状腺腫の合併があったとしても，明らかに描出可能である．しかしながら，良性石灰化病変（腺腫様甲状腺腫における弧状，環状石灰化）においても同様な硬いイメージとして捉えられることがあり，基盤となるBモードの所見を第一に考慮すべきである．乳頭癌は超音波上，特徴的な所見を有しており，診断は容易な事が多い．一方，超音波および細胞診では術前診断困難な濾胞性腫瘍の鑑別診断においても，組織弾性イメージングは，その役割を期待されている．濾胞癌においては，腫瘍辺縁部は中心部に比べ，硬い組織として表示されることが多く，一方，濾胞腺腫においては，腫瘍内部の不均一性は乏しくほぼ均一なイメージであることから，細胞密度の差を組織弾性イメージングは可視化できるものと期待されている．