Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 乳腺甲状腺
パネルディスカッション 乳腺甲状腺1 造影超音波が乳腺診療に何をもたらすのか?(JABTSとの共同企画)

(S344)

第三世代超音波造影剤を踏まえたソナゾイド®乳腺造影超音波検査の臨床的役割

Sonazoid® breast contrast ultrasonography: clinical role for third generation ultrasound contrast agents

中田 典生, 太田 智行, 西岡 真樹子

Norio NAKATA, Tomoyuki OHTA, Makiko NISHIOKA

東京慈恵会医科大学超音波診断センター・放射線医学講座

Department of Radiology, The Jikei University, School of Medicine

キーワード :

【目的】
ソナゾイド®(以下PFB)は第二世代造影剤(以下2USCA)である.世界的には標的指向型の第三世代超音波造影剤の研究が,分子イメージング(以下MI)の分野で盛んになってきた.そこで将来の第三世代超音波造影剤(以下3USCA)で期待されている乳腺診断・治療を踏まえて現在の第二世代超音波造影剤の役割について自験例を交えた文献学的考察を行い検討した.
【方法および結果】
3USCAとは,PFBに代表されるこれまでの2USCAとは異なり,MIの造影剤である.3USCAはマイクロバブルにある特定のリガンドを結合させた分子プローブである.リガンドはある特定のバイオマーカーに特異的に結合する抗体である.このため3USCAは標的指向型造影剤とも呼ばれている.現在,臨床実用化に最も近い標的指向型造影剤にブラッコ社のBR55がある.BR55のリガンドは血管内皮細胞増殖因子受容体の一種であるVEGFR-2である.BR55を用いたxenograftの論文では,乳癌,結腸癌,前立腺癌などが対象で,このうち前立腺癌については現在米国にてPhase2の臨床治験が行われている.BR55で用いられているVEGFR-2はVEGF阻害作用をもつ分子標的治療薬(以下MTT)であるTKI(スニチニブ,ソラフェニブ,パゾパニブ)の作用機序を構成している受容体の一部である.BR55が,これらのTKIの治療適応や治療効果判定に有用である可能性が高い.3USCAは従来の造影剤より治療に密接に関係した造影剤であることが容易に推測できる.テーラーメイド医療(以下TMM)に使用されるMTTに代表される抗癌剤は,単価が極めて高価である.このため近い将来の可能性として,混合医療での使用が検討されるようならば,3USCAの臨床的重要性は特に日本において重要であると考えられる.われわれは,乳腺腫瘤(良性24例,悪性70例)のPFB乳腺造影超音波の研究発表を昨年の学術集会にて行ったが,Time Intensity Curve(TIC)を用いた定量的分析を行った結果,washout ratio(WOR)では良悪性間に有意差を認めないという結果を得た.文献的検索をした結果,乳腺造影超音波における定量解析を行った2010年以後の文献では5件中,1件のみWORに良悪性群に有意差を認めた.我々が独自に作成したanti-CD147抗体標識超音波造影剤を用いたin vitro実験では,癌細胞(肝臓癌)への集積は還流10分後に認められた.この結果からBR55も同程度の時間での標的への集積が推測され,washoutの分析が,3USCAでも有用であるかは疑問が残る.一方,造影早期相での造影剤の挙動は,2USCAと基本的に同一であることから造影早期相,特に造影のピークまでの超音波像や定量解析結果は次世代になっても,現在のPFBで得られた知見は重要であると考えられる.PFBを用いたわれわれの乳腺造影検査の定量解析においても前述したSonoVueを用いた5件の論文と造影早期相で同様の結果が得られた.BR55を例に挙げると,VEGFR-2が結合しにくい乳癌においては現在,昨年のわれわれの発表から導き出されたTICにおけるinitial slopeや造影ピークまでの時間などの数値が良悪性判定に重要であるといったPFBで得られる造影早期の知見は,今後も重要であると推定できる.
【結論】
次世代である標的指向型超音波造影剤+MTTによる乳癌のTMMにおいても,現在使用可能なPFB,特に造影早期相から得られる知見は重要であると考えられる.