Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 乳腺甲状腺
パネルディスカッション 乳腺甲状腺1 造影超音波が乳腺診療に何をもたらすのか?(JABTSとの共同企画)

(S342)

乳癌の造影超音波像と病理組織像の比較

Comparison of CEUS image and Pasology in Breast Cancer

中村 卓1, 野呂 綾1, 平井 都始子2, 小川 真代3, 林 昭伸4, 小塚 祐司4, 中井 登紀子5, 小川 朋子1

Takashi NAKAMURA1, Aya NORO1, Toshiko HIRAI2, Masayo OGAWA3, Akinobu HAYASHI4, Yuugi KODUKA4, Tokiko NAKAI5, Tomoko OGAWA1

1三重大学医学部附属病院乳腺センター, 2奈良県立医科大学附属病院中央内視鏡超音波部, 3奈良県立医科大学附属病院放射線科, 4三重大学医学部附属病院病理部, 5奈良県立医科大学附属病院病院病理部

1Breast Center, Mie University Hospital, 2Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, 3Department of Radiology, Nara Medical University, 4Depertment of Pathology, Mie University Hospital, 5Depertment of Diagnostic Pathology, Nara Medical University

キーワード :

【背景】
乳腺領域にペルフルブタン(商品名:ソナゾイド®)を用いた乳房造影超音波(Breast contrast enhanced ultrasonography,以下CEUS)が保険適応となり3年が経過した.CEUSを行っていると血流が豊富でよく染まる腫瘍と血流がまばらな腫瘤が存在することに気付く.この差が何に起因するものなのか,病理組織学的に検討した報告は少ない.超音波画像上の血管像と病理像との比較を行う場合,通常のHE染色では乳管か血管か一見してわかりにくい.だが,病理学的に血管に特化した免疫染色を行えば,腫瘍における血管構築がCEUSの血管像と相関しているか評価できる可能性がある.今回は,血管内皮細胞や血管周囲の弾性線維に対する免疫染色を行い,造影超音波画像の造影強度と比較した.
【目的】
CEUSの血管構築と病理プレパラート上の血管構造の対比を行う.
【対象と方法】
対象は2014年4月30日から2014年10月1日までに当院で手術を行い,血管内皮細胞のマーカーである,CD31,Est Related Gene(以下ERG),Elastica-Masson(以下E-Masson)の免疫染色を行った10例とした.
使用した超音波装置はGE Healthcare社製のLOGIQ S8.プローブは主に11Lを用いた.ペルフルブタンは0.01ml/kgを静脈注射し,生理食塩水10mlでフラッシュした.
得られた造影所見は超音波装置内蔵ハードディスク内にRaw Dataの形で保存し,検査後に解析を行った.
造影される腫瘍内部で明らかな既存血管とわかるところを除いて一番造影効果の強いところに2mmの関心領域(ROI)を設定し,時間輝度曲線(Time intensity curve,以下TIC)を描き,Peak Intensity(以下PI)を測定した.
病理学的評価方法としては,腫瘍血管の本数を評価するため,CEUSで2mmのROIを設定したところをプレパラート上で同定し,ERG染色で染色される血管内皮細胞の個数を自動計算ソフトで計算し,1視野に占める血管内皮細胞の個数(Microvascular Density,以下MVD)を計算した.また,血管径については血管が太くなれば血管を支える弾性線維が増えるので,E-Masson染色を行い,血管内皮細胞と同時に弾性線維の増生度合いを評価する事で間接的に血管径の太さを評価した.
【結果】
まず,MVDをPIが高い群と低い群に5例ずつ分け比較したところ,高い群のPIの平均は20.9dBでMVDの平均は1063個だった.一方,低い群のPIの平均は10.192dBでMVDの平均は1092.8個だった.
次に,E-Masson染色で腫瘍全体を観察したところ,PIが高い群では血管内皮細胞の周囲に弾性線維が増生し,血管内腔が確認可能な太めの血管が多く認められたのに対し,PIが低い群では弾性線維が認められない血管内皮細胞1層のみの血管が多く,血管内腔が押しつぶされ確認しにくいものが多い傾向にあった.
【考察】
今回,CEUSでよく染まる(PIが高い)グループとあまり染まらない(PIが低い)グループでは,1視野に占める血管内皮細胞の数(MVD)は差がなかった.この結果からは,PIが高くても低くても腫瘍血管の増生程度(血管の本数)は同程度と推測できる.
一方,血管の内腔面積(太さ)に着目して腫瘍全体を観察すると,PIが高い腫瘍では血管内皮細胞の周囲に弾性線維が存在する太めの血管が増えていた.このような血管は既存血管よりは細いが,内皮細胞のみで形成される血管よりは太く,HE染色でも認識しやすかった.
【結語】
血管内皮細胞数(血管の本数)が変わらなくても,血管径が太ければ,細い血管よりも血流が多くなり,PIが高くなる可能性はある.今後,可能であれば血管内腔の面積を直接計測し,PIとの関係を評価したい.