Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 乳腺甲状腺
シンポジウム 乳腺甲状腺4 乳腺・甲状腺・頭頸部体表領域のリンパ節転移診断(JABTSとの共同企画)

(S338)

頭頸部癌の頸部リンパ節転移診断における超音波の役割

Diagnostic role of the ultrasonography in the cervical lymph node metastases of head and neck cancer

齋藤 大輔

Daisuke SAITO

岩手医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科

Otolaryngology and Head and Neck Surgery, Iwate Medical University

キーワード :

頭頸部を原発とする癌(以下頭頸部癌)には,口腔癌・咽頭癌・喉頭癌・頸部食道癌・鼻副鼻腔癌などがあり,組織型の大半が扁平上皮癌である.いずれの頭頸部癌も頸部リンパ節転移をきたしやすく,転移の有無や数・広がりが,治療方針や予後を決定する上で重要な因子となっている.その診断は,CT,MRI,FDG-PET(以下PET)検査等で行われることが多いが,1cm未満のリンパ節においては,転移の診断が非常に難しい.
近年,超音波診断装置の進歩から,Bモード解像度やカラードプラ画像の質が向上し,非常に小さな構造物からもより多くの情報を得られるようになった.乳腺・甲状腺領域では腫瘍の良悪の診断・病期決定のために,超音波は必須検査となっている.
しかしながら頭頸部癌においては,体表より深い位置に原発腫瘍があること・重複癌が多いこと・そして多数のリンパ節転移を起こすことから,CT,MRI,PET等が診断・病期決定において必要な検査とされており,超音波検査はあまり重要視されていなかった.
ところが,従来の画像診断による病期分類に沿った手術治療では,術後早期より郭清外の頸部リンパ節再発の発症や,臨床N分類に比べ病理N分類がより進行していることがしばしば見られ,術前でのリンパ節評価の甘さが危惧されていた.
そこで現在,頭頸部扁平上皮癌のより小さな頸部リンパ節の転移の有無を超音波を用いて診断するために,多施設共同研究にて診断基準案が検討されている.この診断基準案は,リンパ節の厚み・内部構造・血流から総合的に転移の有無を判定している.他の画像診断にて明らかに転移陽性のものは除いた,厚さ6mm前後のリンパ節で,転移陽性的中率・陰性的中率とも80%台と非常によい成績を示している.当科でも11症例20個のリンパ節を検討し,陽性的中率100%(4/4),陰性的中率94%(15/16)と非常によい成績を示した.
しかし,頭頸部癌の実臨床において,多発する頸部リンパ節を全て超音波で検索し判定するのは人的・時間的に難しいのが現状である.さらに原発巣の進展度評価や,遠隔転移・多重癌を検索する上でも従来のCT,MRI,PETは必要な検査である.
これまでの我々の検討から,超音波検査のより優れた点は,他の画像検査,特にPETにおいて検出不能なリンパ節転移を診断することだと考えられる.PETでは集積の強い原発巣周囲の小さなリンパ節の転移判断が難しい.舌癌・口腔底癌などの,口腔癌における顎下リンパ節がこれに当てはまる.この検出の難しい顎下リンパ節の転移判定は,頸部郭清範囲を決めるうえで,非常に重要であり,超音波が有用であると考える.さらに,PETは容易にできる検査ではないため,撮影する時期に制限があり,検査から手術までの期間が一か月以上空いてしまうこともしばしばある.そこで,手術直前に転移の範囲を確認できるのも,超音波の利点である.今回,他の画像診断で得られた臨床N分類が,術前超音波診断にて変更があり,頸部郭清範囲が拡大した症例についても提示する.
さらに,今後の頸部リンパ節の超音波診断においての可能性と展望について,当科を中心に多施設研究を行っている,頸部リンパ節の造影超音波診断についても紹介する.