Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 乳腺甲状腺
シンポジウム 乳腺甲状腺4 乳腺・甲状腺・頭頸部体表領域のリンパ節転移診断(JABTSとの共同企画)

(S337)

乳癌腋窩リンパ節転移に対する超音波の診断精度の検討

Diagnostic accuracy of ultrasound for axillary lymph node metastasis in breast cancer

五味 直哉1, 加藤 千絵子2, 坂井 威彦3, 富樫 保行2, 五十里 美栄子2, 山田 恵子2, 國分 優美1, 堀井 理絵4, 秋山 太5, 岩瀬 拓士3

Naoya GOMI1, Chieko KATOH2, Takehiko SAKAI3, Yasuyuki TOGASHI2, Mieko IKARI2, Keiko YAMADA2, Yumi KOKUBU1, Rie HORII4, Futoshi AKIYAMA5, Takuji IWASE3

1がん研究会有明病院画像診断部, 2がん研究会有明病院超音波検査部, 3がん研究会有明病院乳腺センター, 4がん研究会有明病院病理部, 5がん研究所病理部

1Diagnostic Imaging, The Cancer Institute Hospital of Japanese Foundation for Cancer Research, 2Ultrasound, The Cancer Institute Hospital of Japanese Foundation for Cancer Research, 3Breast Oncology Center, The Cancer Institute Hospital of Japanese Foundation for Cancer Research, 4Pathology, The Cancer Institute Hospital of Japanese Foundation for Cancer Research, 5Pathology, The Cancer Institute of Japanese Foundation for Cancer Research

キーワード :

【背景・目的】
乳癌の腋窩リンパ節転移の診断は触診と画像診断で行うのが一般的である.術前にリンパ節転移が指摘できないN0乳癌に対しては,センチネルリンパ節生検を行い,陰性の場合は腋窩リンパ節郭清を省略するのが乳癌の標準治療になっている.病期診断およびセンチネルリンパ節生検の適応決定のために,精度の高い腋窩リンパ節評価が必要とされている.触診によるリンパ節評価の精度は術者の技量によって左右されるため,画像(超音波)による腋窩リンパ節の評価が重要になってきている.当院の超音波による術前腋窩リンパ節転移診断の精度について検討を行った.
【対象と方法】
2012年1月から10月に手術を施行した原発性乳癌症例の内,術前に腋窩リンパ節超音波を施行した922例を対象とした.術前にリンパ節転移が疑われた症例は,超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行った.また術前にリンパ節転移陰性と診断された症例は,センチネルリンパ節生検により転移の有無を確認した.超音波診断が,穿刺吸引細胞診,術中診断(OSNA法を含む)および術後の病理組織診断と一致しているかを検討した.超音波による転移診断は左右差,リンパ門の有無,皮質の厚み,形状などの点に着目して総合的に判断した.
【結果】
超音波で転移陰性と診断した759例(82.3%),転移陽性と診断した163例(17.7%)のうち,細胞診,術中診断,術後病理診断で転移を認めたのはそれぞれ149例(19.6%)と140例(85.9%)で,感度48.4%,特異度96.4%,正診率81.3%であった.超音波で転移陽性と診断した症例中,微小転移(2mm以下)と診断された68例を除外すると,感度62.4%,特異度96.4%,正診率88.3%であった.また超音波診断が偽陰性となった149例のうち,術後病理結果でリンパ節転移が4個以上となった症例が25例(16.8%)存在した.このうち微小転移と診断された6例を除く19例中,超音波で軽度腫大が指摘されていたものは7例であった.超音波で指摘できなかった12例の超音波像は全てリンパ門を認め,皮質の厚みは平均2.1mmで正常構造を呈していた.これらの組織型は硬癌8例,浸潤性小葉癌3例,充実腺管癌1例であった.
【まとめ】
微小転移を除外すると,超音波による腋窩リンパ節転移診断の精度は感度62.4%,特異度96.4%,正診率は88.3%であった.しかし転移陰性と診断した759例中,リンパ節転移が4個以上で,超音波画像では正常構造を呈していた症例が12例(1.6%)存在し,その組織型は90%以上が硬癌,浸潤性小葉癌であった.これらの組織型では超音波を使用した形態によるリンパ節転移診断には限界がある事が示唆された.