英文誌(2004-)
特別プログラム 乳腺甲状腺
シンポジウム 乳腺甲状腺3 Comprehensive ultrasound in breast(JABTSとの共同企画)
(S334)
Comprehensive Ultrasound,発想の背景と目的
Concept and Purpose of Comprehensive Ultrasound
中島 一毅
Kazutaka NAKASHIMA
川崎医科大学総合外科学
General Surgery, Kawasaki Medical School
キーワード :
ここ10年の超音波診断装置の進歩は著しい.特にエラストグラフィや高感度ドプラなどの新モードの登場は注目されており,論文報告や学会企画が進んでいる.しかし,最も大きな超音波診断装置の変化は,フルデジタル化,コンパウンド技術などによるSN比の改善,送受信の新方式の導入,探触子やADコンバーターの技術革新などの大幅なイノベーションにより,基本的なBモード画質が分解能,コントラスト,フレームレイトすべてにおいて大幅に性能向上したことである.特に乳腺領域ではミリ以下の病変の診断が可能な程度にまで到達しており,結果として数ミリ程度の病変においては,より繊細な観察により,高い診断能や病変の広がり診断も可能となっている.
一方,超音波検査が検査者の手により行われてるため,その精度が検査者の技術により変化することは周知の事実である.そのため,前述した大きく進化した超音波診断装置の性能を引き出すことなく,無駄にしている検査者も多いと想像される.
演者は長年,乳房超音波検査技術の精度管理方法の研究開発をしていたが,前述したエラストグラフィや高感度ドプラなどの新モードの精度管理と多くの共通部分があるとを発見した.言い換えれば,この3モードを高精度に使いこなせる状態であれば,精度管理された超音波検査ができている状態,すなわち超音波診断装置の性能を引き出せている状態といえる.また,この状態にあれば,3モードすべての高精度な情報が同時に得られているため,有効に組み合わせることによって高い診断精度が得られることも想定された.そこで,本手法をComprehensive Ultrasoundと命名し,Breast Cancer誌に報告するとともに,本技術の完成と教育方法の研究を開始した.
まず,Phantom作製が可能なエラストグラフィによって技術向上するかどうかの実験を試みた.当初,当院での研修を希望する医師,技師に対し,指導の形で行い,一定の成果を確認した.次に講習会の形で学会総会に合わせて数回の実技講習形式の実験をさせていただいた.すべての講習会において,講師および受講者の双方から良好なご評価をいただいており,本法の有効性に強い確信を得るに到った.
今回,Comprehensive Ultrasoundのシンポジウムを企画させていただくにあたり,本法の本質的概念の発送と理論,具体的診断手法について解説させていただき,本法の正しい普及に貢献させていきたい.