大貫 幸二

Ohnuki KOJI

岩手県立中央病院乳腺・内分泌外科

Department of Breast and Thyroid Surgery, Iwate Prefectural Central Hospital

キーワード :

超音波検査を乳癌検診として広く行う際に問題となるのは，偽陽性の増加と精度管理の難しさなどが挙げられる．J-STARTは，試験のデザイン上マンモグラフィと超音波検査は別々に行われ，どちらかの検査が要精密検査と判定されたら最終的に要精密検査と判定された（分離併用独立判定方式）．しかし，客観性・再現性のあるマンモグラフィと断層像が得られる超音波検査の利点を生かすためには，マンモグラフィを参照しながら超音波検査を行い，得られた画像を総合的に判定する方式が最も精度が高い（同時併用総合判定方式）．本年，日本乳癌検診学会総合判定委員会において「マンモグラフィと超音波検査の総合判定マニュアル」が作成された．日本乳腺甲状腺超音波診断医学会で作成された「マンモグラフィと超音波検査の併用検診における総合判定基準」では，マンモグラフィ所見ごとに超音波検査の位置づけを示している（表）．判定基準の要点は下記のとおりである．1）マンモグラフィで要精査所見がない場合，マンモグラフィ上の高濃度部分については超音波検査で存在診断を行う．2）マンモグラフィで非対称性陰影がある場合，超音波検査で存在診断・質的を行う．3）マンモグラフィで境界明瞭平滑な腫瘤がある場合，超音波検査で質的診断を行い単純嚢胞や明らかな線維腺腫は精査不要とする．4）マンモグラフィで浸潤癌を示唆する腫瘤，悪性を否定できない微細石灰化，構築の乱れがある場合は，超音波所見に関わらず原則として要精検とする　同時併用総合判定方式でマンモグラフィと超音波検査の併用検診を行った報告では，受診者4,941名に対して，マンモグラフィか超音波検査のいずれかでカテゴリー3以上（要精検）となったのは411名（8.3％）であったが，総合判定を行うことによって最終的な要精検者は283名（5.7％）まで減少している．欧米では，超音波検査は医師が行う精密検査の手段という位置づけであり，費用効果分析からも対策型検診として超音波検査は推奨されていない．日本において，マンモグラフィと技師が行う超音波検査の総合判定の標準化が行われ，マンモグラフィ検診と比較して感度は同等以上，要精検率は同等以下という成績であれば，Dense Breast対策として対策型検診に超音波検査を導入しても良いと考えられる．ただしその場合，過剰診断についても研究を進めていく必要がある．