Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 乳腺甲状腺
シンポジウム 乳腺甲状腺2 乳房超音波検診の意義を考える/J-START(厚生労働科学研究委託費(革新的がん医療実用化研究事業 乳がん検診における超音波検査の有効性検証に関する研究))の結果からの提言(JABTSとの共同企画)

(S330)

乳房超音波検診の意義を考える(J-STARTの結果から)

Ultrasound screening for breast cancer based on the results of J-START

大内 憲明

Noriaki OHUCHI

東北大学大学院医学系研究科腫瘍外科学分野

Department of Surgical Oncology, Tohoku University Graduate School of Medicine

キーワード :

国が定めたがん対策基本法では,科学的根拠に基づくがん医療の推進が求められている.がん検診における科学的根拠とは何か? 答えは,当該検診法に死亡率減少効果が認められることである.問題は,死亡率減少効果の検証方法であり,数ある試験の中でランダム化比較試験(RCT)が最も科学的根拠の質が高いとされている.現在,科学的根拠(死亡率減少効果)が示されたがん検診はマンモグラフィによる乳がん,細胞診による子宮頸がん,便鮮血検査による大腸がんに絞られるが,根拠となったデータの殆どは欧米で実施されたものであり,日本ではこれまで大規模RCTが実施されたことはなかった.戦略的アウトカム研究班(座長:黒川清)の平成17年度報告書には,「いつまでもRCTができない国であってはならない」と記載されている.
マンモグラフィ乳がん検診の有効性については,1960年代の米国HIP Trialから最近の英国Age Trialまで多くのRCTを基に今でも検証が続けられている.日本でもMiyagi Trialから20年以上が経過し,地域がん登録と照合したデータにより一定の評価が得られている.50歳以上においては感度,特異度も高く,死亡率減少効果も認められが,40歳代においては感度,特異度が低下する.最近,US Preventive Services Task Force(USPSTF)が乳がん検診ガイドラインを修正したこともあり,マンモグラフィ検診の限界が指摘されている.そこで,40歳代女性を対象に我が国で初めての大規模RCTとなる,がん対策のための戦略研究(J-START)「超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験」が平成18年度から開始された.
J-STARTでは40歳代乳がん検診の方法として,マンモグラフィに超音波を併用する(介入)群と併用しない(非介入)群との間でRCTを行い,両群間で検診精度と有効性を検証する目的で,プライマリ・エンドポイントを感度・特異度及び発見率とし,セカンダリ・エンドポイントを累積進行乳がん罹患率とした.平成19年度から登録を開始し,平成22年度末までに介入群38,313名,非介入群37,883名の合計76,196名となった.7万人以上の前向き臨床試験は世界でも最大規模であり,がん対策として画期的な研究といえる.
一方で,超音波検査による乳がん検診をPopulation-basedで,Average riskの健康者に行うには精度管理,不利益等,様々な課題が浮かび上がってくる.本講演では,J-STARTの最新データを示しながら,乳がん検診の今後のあり方について概説する.