稲村 昇, 萱谷 太, 濱道 裕二, 河津 由起子, 田中 智彦, 金川 奈央, 豊川 富子

Inamura NOBORU, Futoshi KAYATANI, Yuji HAMAMICHI, Yukiko KAWAZU, Tomohiko TANAKA, Nao KANAGAWA, Tomiko TOYOKAWA

大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科

Pediatric Cardiology, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【背景】
胎児心エコー検査ガイドラインでは全妊娠を対象とした胎児心臓スクリーニングに相当するレベルⅠを提唱しているが，重症な先天性心疾患（CHD）がスクリーニングできないことがある．
【目的】
全てのCHDではなく新生児入院の対象となるCHDを対象とした臨床上効率の良いスクリーニング方法を考案する．
【対象】
当センター新生児入院の代表的CHDは完全大血管転位（TGA）が18％，単心室（SV）が13％，ファロー四徴（TOF）が12％，大動脈縮窄・離断（IAA/CoA）が11％，総肺静脈還流異常（TAPVC）が6％で，以上のCHDで新生児入院の60％を占めた．SVは全例胎児診断を受けておりスクリーニングはできていたので除外した．本研究ではスクリーニングが難しく，且つ，新生児入院の代表的CHDであるTGA, TOF, IAA/CoA, TAPVCを対象とした．
【方法】
正常胎児と対象CHDの胎児心エコーデータを比較し，ROC解析とχ二乗検定で統計的に有用なカットオフ値を求めた．
【結果】
1.TGA: three vessel trachea viewで見られるI-shape sign（Ishii et al. UOG 2013）を検証した．TGA31例中30例にI-shape signを認めたが，正常心は認めなかった．I-shape signはTGAのスクリーニングでsensitivity 96.7％，Specificity 97.1％であった．2.TOF: cardiac axisの有用性を検証した．TOF 74例のcardiac axisは63.9±1.7°，正常97例は40.8±1.0°であった（p＜0.001）．ROC解析ではカットオフ値は50°（sensitivity 88％，specificity 99.3％）であった．3. IAA/CoA: three vessel viewでの大動脈（Ao）/肺動脈（Pa）比はIAA/CoA0.53±0.09で正常97例は0.84±0.12（p＜0.001）．ROC解析ではカットオフ値は0.7（sensitivity 100％，specificity 90.6％）であった．4.TAPVC:左房後壁/下行大動脈前壁の距離（post LA space index）を計測した．TAPVC 6例のpost LA space indexは1.51±0.71，正常97例は0.71±0.23であった（p＜0.001）．ROC解析ではカットオフ値は1.27（sensitivity 100％，specificity 99％）であった．
【結語】
1．ターゲットを絞ったCHDのスクリーニングは統計上有効である．2．四腔断面とthree vessel（trachea）viewの2断面でできるため簡便である．3．実際施行してどの程度の擬陽性があるかは検証が必要である．