Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科3 胎児心臓スクリーニング方法をどうする

(S321)

総肺静脈還流異常の胎児スクリーニングのための総合戦略

The combined strategy for the fetal screening of TAPVD

川滝 元良1, 金 基成2

Motoyoshi KAWATAKI1, Motonari KIMU2

1東北大産婦人科, 2神奈川県立こども医療センター小児科

1Obstetrics and Gynecology, Tohoku University, 2Pediatrics, Kanagawa Children’s Medical Center

キーワード :

【背景】
総肺静脈還流異常(TAPVD)は,出生直後に発症し,緊急手術が必要なことが多く,胎児診断の必要性が高い重症心疾患である.しかし,胎児診断率は低率であり,有効な胎児スクリーニング法が求められている.
【目的】
Bモード,カラーまたはHDフロー,パルスドプラーを組み合わせた総肺静脈還流異常の胎児スクリーニングの新しい戦略を提案することを目的とした.
【対象】
胎児診断した単独のTAPVD(isolate TAPVD)9例,複雑心疾患に合併したTAPVD(complex TAPVD)26例,複雑心奇形でTAPVDのない症例(CHD)57例,正常例(normal)31例を対象とした.
【方法】
3つのスクリーニング法を組み合わせた.方法1:四腔断面で下行大動脈と左房後壁の最短距離(ADL)を測定した.方法2:HDまたはカラーフローで左下肺静脈と右下肺静脈が同時に描出される断面でBモードを観察し,肺静脈と左房の間の“隔壁”の有無を観察した.方法3:HDまたはカラーフローで末梢肺静脈の描出し,パルスドプラーで波形を記録した.波形を次の3パターンに分類した.山と谷を2つあれば二峰性,山と谷を一つあれば一峰型,山谷がないものを平坦型とした.
【結果】
方法1:isolate TAPVD, complex TAPVDとも優位にADLが大であった(P<0.01)正常心とisolate TAPVDの比較ではcut off pointは3.5mm(Sensitivity=1.0 Specificity=0.97), CHD単独とComplex TAPVDの比較ではcut off pointは5.7mm(Sensitivity=1.0 Specificity=0.88).方法2:isolateおよびcomplex TAPVDでは全例で隔壁が観察された.一方,normalでは観察されなかった.方法3:正常例全例が二峰性のパターンを示した.isolateおよびcomplex TAPVDのうち一峰性または平坦型を示した症例は全例出生直後に高度の呼吸不全とチアノーゼを発症し,緊急手術を必要とした.
【考案】
方法1は四腔断面のBモードを使った極めて簡単な方法であり,レベル1のスクリーニングに適していると考えられる.方法2は高画質のBモード,HDまたはカラーフローが必要である,質の高いスクリーニング法である.方法3はハイリスクのTAPVDをスクリーニングすることができる点で優れていると考えられる.
【結語】
胎児スクリーニングが最も困難とされるTAPVDを確実にスクリーニングするには,持てる手法を駆使した総合的なスクリーニング戦略が必要である.