Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科2 卵巣腫瘍の悪性・良性の鑑別法

(S318)

3D超音波による卵巣腫瘍内構造の評価

Evaluation of the inner structure of ovarian masses by 3D ultrasound

井上 統夫, 増崎 英明

Tsuneo INOUE, Hideaki MASUZAKI

長崎大学医学部産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University Hospital

キーワード :

【緒言】
付属器の腫瘤を認めた際には,まず超音波で大まかな腫瘤の性状やサイズを把握して,MRIなどで良悪性の鑑別診断をすることが多い.3D超音波は検査者が任意の画像をいくつか保存するのとは違い,3次元ボリュームデーターを保存するため後に客観的にデーターを検証することができる.そこで3D超音波によって卵巣腫瘍の内部構造の質的評価が可能か否かについて検討した.
【対象および方法】
2013年1月以降に当科において臨床的に卵巣腫瘍と診断され,手術を施行した例のうち,術前に3D超音波を行った38例を対象とした.全ての例で術前にMRIも施行されていた.術前の3D超音波所見,2D超音波所見,MRI所見および術後の摘材肉眼所見と病理組織診断とを比較し,それぞれの画像診断等の有効性を後方視的に評価した.
【成績】
摘材の病理組織検査結果は良性27例,境界悪性8例,悪性3例であった.悪性腫瘍であった3例については術前の3D超音波およびMRIで悪性の可能性を疑い得たが,境界悪性であった8例については4例で3D超音波,MRIともに良性と判断されていた.
3D超音波で腫瘤内部に充実部または小嚢胞の存在が疑われたのは38例中18例であった.その18例中16例についてはMRIでも同様に評価されていた.
一方2D超音波では38例中15例であり,3D超音波と比べると3例ではあるが内部構造を検出できない例もあった.
これら内部構造を認めた例のうち,3Dカラードプラ法で明らかな血流を認めたのは7例であり,そのうち3例が境界悪性および別の3例が悪性であった.残りの1例は腹膜嚢胞の例であり,血流を認めた部位は正常卵巣部分であると思われた.
全38例について,3D超音波所見とMRIおよび摘材所見には大きな相違は認めなかった.
【考察】
3D超音波を用いれば,診察時には気付かなくても後で客観的に検証できるため2D超音波に比べて腫瘤内部の構造を正確に把握できる可能性がある.またMRIとの比較でも所見に大きな相違がなく,摘材所見とも概ね一致していたことから,卵巣腫瘍の内部構造評価に対して有用であると考えられる.上皮性卵巣境界悪性腫瘍の鑑別はMRIででも困難な場合があったが,3Dカラードプラ法を用いても正確な診断は難しい場合がある.
以上の検討結果を踏まえ,卵巣腫瘍の良悪性の鑑別に対する3D超音波の活用に関して文献的考察を交えて論じたい.