加地 剛¹, 七條 あつ子¹, 高橋 洋平¹, 中山 聡一朗¹, 前田 和寿², 石橋 広樹³, 苛原 稔¹

Takashi KAJI¹, Atsuko HICHIJO¹, Youhei TAKAHASHI¹, Soichiro NAKAYAMA¹, Kazuhisa MEDA², Hiroki ISHIBASHI³, Minoru IRAHARA¹

¹徳島大学病院産科婦人科, ²四国こどもとおとなの医療センター産婦人科, ³徳島大学病院小児外科・小児内視鏡外科

¹Obstetrics and Gynecology, Tokushima University Hospital, ²Obstetrics and Gynecology, Shikoku Medical Center for Children and Adults, ³Pediatric Surgery and Pediatric Endoscopic Surgery, Tokushima University Hospital

キーワード :

【目的】
鎖肛は出生後早期に手術が必要であり，合併異常も多いことから出生前の診断が望ましいといえる．従来鎖肛の胎児診断はほぼ不可能とされてきたが，近年超音波による胎児肛門の観察が鎖肛の胎児診断に有用であることが報告されている．今回，鎖肛胎児診断例の肛門超音波所見について検討し，胎児診断における肛門超音波像の有用性について報告する．
【方法】
H20年からH26年11月までに当院で出生した鎖肛14例中，胎児期に鎖肛を強く疑った5例について後方視的に行った．肛門の胎児超音波所見は1）2D像によるリング状の肛門管像の有無，2）3Dレンダリング像による殿部表面の肛門（陥凹）の有無，について検討し3）間接所見の有無（腸管内の高輝度エコー像や腸管拡張）についても検討した．
【結果】
鎖肛5例の内訳は高位が3例，中間位が1例，低位が1例であった．
超音波所見については，1）2D像による肛門管の評価では，全例で異常を認めた．低位の1例を除いた4例で肛門管像を認めなかった．低位の症例では肛門管が低形成様に描出されたが，出生後に肛門管ではなく肛門皮膚瘻であることが判明した．2）殿部表面の3Dレンダリング像を得られたのは羊水過多を伴った2例だけであったが，その2例では肛門を認めなかった．3）直腸内に点状高エコー像は高位1例と低位1例に認めた．
【結論】
2D超音波による肛門管の評価は，鎖肛の胎児診断に最も有用である．特に高位や中間位では肛門管像を認めない．しかしながら低位鎖肛では肛門皮膚瘻が肛門管様に描出されることがあり注意を要する．一方殿部表面の3D超音波は出生後の視診と同様に肛門の有無を見ることができ鎖肛の補助診断として有用であったが，描出できる症例が限られる．