Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科1 経会陰超音波検査は産婦人科の必須の検査法になりうるか

(S304)

経会陰超音波検査による鉗子分娩後の肛門括約筋損傷の評価

Evaluation of the anal sphincter injuries after forceps delivery by perineal ultrasound

後藤 美希, 市瀬 茉里, 樋口 紗恵子, 手塚 真紀, 坂巻 健, 小林 浩一

Miki GOTO, Mari ICHINOSE, Saeko HIGUCHI, Maki TEZUKA, Ken SAKAMAKI, Koichi KOBAYASHI

東京山手メディカルセンター産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Tokyo Yamate Medical Center

キーワード :

【目的】
不随意に便やガスが漏出する肛門失禁は,日常生活に多大な影響を及ぼし,QOLを低下させる.肛門失禁の原因として突発性(原因不明)に次いで分娩時損傷が多いと言われている.当院では,分娩後1か月以内に施行した経会陰超音波検査により,2011年に経腟分娩の17%に潜在性肛門括約筋損傷があると報告しているが,今回は,鉗子分娩症例において,肛門括約筋損傷の頻度,部位,肉眼所見と超音波所見の相違,経会陰超音波検査の有用性について検討した.
【対象と方法】
対象は2013年4月から2014年11月に当院で鉗子分娩となり,検査に同意を得た初産婦22症例.超音波装置はGE Healthcare社製voluson i, 5-9MHzの経腟3D/4Dプローブを使用した.産後4日目に会陰部にプローブを当て,肛門管を矢状断面で肛門端から肛門直腸角まで描出し,3D Volumeデータを取り込んだ.TUI(tomographic ultrasound imaging)を用いて,肛門管に垂直方向に幅1mmのスライス画像を作成,肛門括約筋の損傷の有無を視覚的に評価した.検査,評価は全て一人の検者が行い,評価は隣り合った画像2つ以上で肛門括約筋が連続していない場合に損傷ありとした.
【結果】
22例全てに,左側正中会陰切開を行っており,分娩立ち会い医師の肉眼所見による裂傷の程度は,第二度会陰裂傷14例(64%),第三度会陰裂傷7例(32%),第四度会陰裂傷1例(4%)であった.経会陰超音波検査による評価では,22例中11例(50%)に潜在性肛門括約筋損傷を認め,損傷部位は,1時方向が7例(64%),12時方向が2例(17%),1時,11時の2方向が1例(9%),11時方向が1例(9%)であった.第二度会陰裂傷14例中7例(50%),第三度会陰裂傷7例中4例(57%)に,超音波検査上損傷を認め,第三度会陰裂傷で損傷を認めた4例中2例は,肉眼所見とは別の部位に損傷を認めており,肉眼所見での裂傷部位は修復されていた.第四度会陰裂傷の1例は損傷を認めず,修復されていた.
【考察】
鉗子分娩症例では,肛門括約筋損傷の頻度が高かった.損傷部位は1時方向(会陰切開側)が多かったが11時方向も2例認めており,鉗子匙が同方向を通ることによる影響と考えられた.経会陰超音波検査を施行することにより,肉眼所見では診断ができなかった肛門括約筋損傷を診断することが可能であった.また,損傷部位がきちんと修復されているか否かを確認する手段としても有用であった.