Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科1 経会陰超音波検査は産婦人科の必須の検査法になりうるか

(S304)

周産期における女性骨盤底の変化 〜3D probeを用いた経会陰超音波による検討〜

The study of femele pelvic floor’s structure during perinetal period by perineal ultrasound using 3D probe

西林 学

Manabu NISHIBAYASHI

地域医療振興協会練馬光が丘病院産婦人科

OB/GY, Jadecom Nerima-Hikarigaoka Hosp.

キーワード :

経腟分娩に伴い骨盤内の組織に物理的な損傷が生じ,産後に様々な症状を生じる.具体的には,経腟分娩による恥骨頚部筋膜,直腸膣中隔,肛門挙筋などの損傷により骨盤臓器脱(子宮脱,膀胱瘤,直腸瘤など)や腹圧性尿失禁が生じ,さらに肛門括約筋損傷により便失禁やガス失禁が生じることが知られている.
経会陰超音波により女性骨盤底を精査する方法は1970年代より行われ,当初は2D probeによる評価が行われていたが,近年は3D probeを用いた方法が世界的に行われるようになっている.
当院では,2014年5月より当院で分娩予定の妊婦を対象に経腟3D probeを用いて骨盤底の観察を行っている.具体的には妊娠24週,34週,分娩後退院診察時,分娩後1ヶ月,の計4回経会陰超音波を行い,volume detaを保存した上で,後日,肛門挙筋,肛門括約筋の損傷の有無の確認,骨盤内面積の計測を行い,それに加え尿失禁・便失禁についてのアンケート調査を施行している.
抄録作成時点で160例の症例登録がなされ,すでに49例が分娩に至っている.現時点での解析では,1)初産では分娩までに骨盤底の損傷があった症例は認めなかった 2)経膣分娩を経験した経産婦は,初産婦と比べ分娩前の骨盤内面積が有意に広かった 3)分娩前と比べ,分娩後の骨盤内面積は増加し,出産後1ヶ月の時点でも分娩前には戻っていなかった 4)分娩様式が帝王切開のみの患者では,分娩後にも骨盤底の損傷や骨盤内面積の増加は認められなかった といった結果だった.
当日は,残りの症例も含めた解析結果をお示し,さらに超音波所見と尿失禁・便失禁との関係についての考察も行う予定である.
今後研究が進み,周産期における女性骨盤底の「標準値」が求められれば,分娩進行の予測や将来の骨盤臓器脱発症の予測などへの応用も可能ではないかと考える.